ひらめきブックレビュー

スタンフォード大の人気講義に学ぶ 権力の正しい用法 『スタンフォードの権力のレッスン』

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「権力」なんて自分には関係ないと思う人もいるだろう。しかし、他者に働きかけ、リーダーシップを発揮せねばならないときは、誰にでもある。ちょっとしたプロジェクトを任されたり、硬直した会議を動かしたり、子育ての中で主導権を握ったりする場合もそうだ。事の大小はあれど、誰もが「権力」を使っている。

本書『スタンフォードの権力のレッスン』(御立英史訳)のテーマはずばり「権力の上手な使い方」だ。権力の正体や仕組みを解きほぐし、戦略的に自分の権力を示す方法を多くのエピソードとともに論じている。米スタンフォード大学経営大学院の人気講座「パワフルに行動する方法」の知見が基になったもので、著者のデボラ・グルーンフェルド氏は講座を率いる社会心理学の教授だ。

権力を示す2つの方法

権力はステータスの高い人に付随している、絶対的なものだと思いがちだ。だが著者は、権力とは他者との関係性や「文脈」の中で形づくられ、状況に応じて変化するものだという立場を取る。だからこそ、権力をうまく使おうと思えば、柔軟かつ意図的に自分のふるまいをコントロールする必要がある。

権力を上手に使う方法として挙げられているのが「パワーアップ」と「パワーダウン」だ。前者は自分の権力を目に見えるかたちで強調することで、後者は自分の権力を控えるような行動を指す。例えば会議中に声の大きいメンバーの主張をさえぎり、控えめなメンバーに話を振る行為はパワーアップ。一方、ヘッドハントの際に、引き抜く側が親しみやすさを演出して、対象の候補者の心を開かせることはパワーダウンに当たる。権力を適切に発揮するためには、どちらの方法も重要なのだと著者は説く。

同大学院の授業では、こうしたアプローチを学ぶために「演劇」を取り入れているそうだ。俳優や舞台監督を招き、学生らは演技のレッスンを通して、感情や素質に左右されずに自らの行動をマネジメントする術を学ぶ。

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