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テレワーク機に広がる転勤制度見直しが女性のキャリアに追い風(写真はイメージ=PIXTA)

テレワーク機に広がる転勤制度見直しが女性のキャリアに追い風(写真はイメージ=PIXTA)

新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)により、経済は大きな打撃を受けました。一方、私たちにとっては働き方を見直す契機にもなりました。その1つが感染予防のために行われた在宅勤務やサテライトオフィス勤務などのテレワークです。テレワークでの業務が可能であることがわかると、今度は転勤制度を廃止したり、見直したりする企業も出てきました。これは長い目で見ると、女性のキャリアにとってポジティブな影響をもたらすと考えられます。

転勤廃止、単身赴任解除を打ち出す企業が続々

2021年9月、NTTはコロナ収束後もテレワークを原則とし、転勤や単身赴任制度をなくしていく方針を発表しました。職住接近の働き方を可能とするため、22年度には現在の4倍にあたる260拠点以上のサテライトオフィスを設ける計画を明らかにしています。

また、富士通は20年から単身赴任の解消を掲げ、この1年で約900人もの単身赴任を解消しています。テレワークと出張で、十分にカバーできると見込んでいるのです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)時代への変革を加速させるものとして、こうした動きは少しずつ広がっていくことが想定されます。出張やテレワークなどで業務が可能であれば、あえてコストをかけて転居を伴う転勤をしなくてもいいのではないか、と考えるのは自然な流れと言えるでしょう。

転勤は人事異動の1つの形態ですが、なぜこれが当たり前のものとして日本に根付いてきたのでしょうか。そもそも、日本企業では職務(ジョブ)を明確にすることなく新卒を一括採用するのが主流なやり方で、入社後に企業の人事権として配置や異動が行われてきました。長期雇用を前提に、会社に見合う人材を育て、それが結果として個人のキャリア形成につながっている実情があります。

配置転換に関する判例においては、これまで企業の裁量が広く認められてきました。就業規則において、業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあることで、事業主に包括的な転勤命令権があると一般的には考えられています。

転勤制度と日本型雇用システムの弊害

転勤を実施する目的には、広域に事業所拠点を持つ企業がビジネス展開の対応として企業側の都合で行うことが挙げられます。日本は解雇規制が厳しいため、簡単に社員を辞めさせ入れ替えを行うことはできません。そのため組織内で人材を調達する必要があります。

もう1つの目的として、転勤によって職務経験の幅を広げ、様々なポストを任せることで能力開発や育成を効果的に行う狙いがあります。人的なネットワークも拡大し、将来のマネジメント・幹部として育成する側面も大きいでしょう。つまり、転勤に応じなければ、昇進も給与アップも大きく期待できないということです。

一見すると理にかなっているように見えるかもしれません。しかし、これは女性の社会進出が広まる以前に出来上がった日本型雇用システムの特徴の1つで、男性が稼ぎ手として働くことを想定したモデルと言えます。

実際、転勤族の夫を持つ多くの女性たちは、希望する会社に就職できたとしても、転勤が決まると仕事を辞めていきました。本人が仕事を続けるために、あるいは子供の教育や介護など様々な理由で単身赴任を選ぶと、子供がいる人は一気に「ワンオペ育児」がのしかかってきます。女性が転勤を命じられることも当然ありますが、配偶者である男性が仕事を辞めて同行する、という話はあまり聞きません。

既婚の女性たちは、いつ配偶者が転勤になるかわからないことから、せっかくチャンスが巡ってきてもキャリアアップを手控えるようになります。たとえ未婚の女性であっても、将来結婚したときに、配偶者の転勤によって仕事を続けられるかどうかわからない、という不安が付きまといます。それが長期的なキャリアを描くときに足かせともなっているのです。

このように、企業の転勤政策は、女性のキャリア形成に大きな影響を与えてきました。1997年以降、雇用者の既婚層では共働き世帯が過半数を占め、その差はますます開いています。社会情勢が変化する中、転勤政策は本当に必要なものと言えるのでしょうか。

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