日比くん「本当に課税逃れを防げるのですか」

一定の効果はあると思います。OECDの試算では、法人税に15%の最低税率を設けると、世界全体で年1500億ドル(約17兆円)の追加税収が生じます。デジタル課税を導入すれば、年1250億ドルの企業利益に対する課税権を、サービスの消費国・地域に配分できるそうです。

それでも不安は残ります。今回の合意では、工場などの有形資産や従業員への支払い給与の一部を、課税対象から除くのを認めています。10年間の移行期間を設け、除外できる割合を段階的に減らします。法人税の優遇措置で企業を誘致してきた新興国などへの配慮ですが、こうした規定が抜け道にならないよう注意する必要があります。

合意内容の細部を詰めるのはこれからです。その過程で各国・地域の対立が再燃することもあり得ます。

名瀬さん「日本への影響もありそうですね」

デジタル課税の対象には、大規模な日本企業が一部含まれる可能性もあります。新興国などに進出し、15%の最低法人税率を実質的に下回るような優遇措置を受けている日本企業も、税負担の増加につながり得ます。日本への影響は比較的軽微といわれますが、立地やサプライチェーン(供給網)の選択を左右しないとは限りません。

欧米ではこの合意も踏まえ、法人課税を強化する動きがみられます。日本の法人税率(国税)は、80年代の43%強から徐々に引き下げられ、現在は23%強となっています。岸田政権も中長期的な法人税改革を視野に入れておくべきかもしれません。

ちょっとウンチク

富の偏在、是正は遠く

136カ国・地域の合意は法人課税の改革のみならず、国際協調の再建にも希望を抱かせた。コロナや温暖化といった地球規模の問題解決にも生かしてほしい成果だ。

それは世界の冷徹なパワーゲームの産物でもある。巨大IT企業の枠を超えて、多国籍企業全般にデジタル課税の網を広げたのは、GAFAなどへの狙い撃ちを避けたい米国の骨抜きのなせるわざだった。

大企業や富裕層に応分の負担を求め、富の偏在を正す努力は緒に就いたばかりだろう。この合意は「スタート」であって「ゴール」ではあるまい。(編集委員 小竹洋之)

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日本経済新聞を日ごろからよく読んでいる女性読者の愛称として「ニッキィ」が生まれましたが、新たに2代目のニッキィとして人工知能(AI)を活用したバーチャルなキャラクターが誕生しました。日本経済新聞社の研究開発組織、日経イノベーション・ラボがスタートアップ企業のデータグリッド(京都市)の協力を得て、日経の若手社員の顔写真をAIに学習させ作成しました。
「なぜこんなことが起きているの」といった疑問、好奇心をもとに、2人がベテラン記者に質問していきます。

[日本経済新聞夕刊 2021年11月15日付]

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