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「重要なのは行動」 エキナカ仕掛け人女性の原点は

働く女性のキャリアスパイス(1)

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NIKKEI STYLE

結婚や出産で女性が職場から去っていったのは昔の話。ライフイベントも経ながら働き続けていくのが、令和の女性たちに多いワークスタイルだ。とはいえ、ロールモデルが身近にいなくて先行きが見通せなかったり、働き始めた頃とは違って「成長」を実感できなかったりで悩むことも。先輩女性たちはどんな体験をバネにキャリアを築いていったのだろうか。活躍する女性に、自身を今に導いた「あの頃」や迷いを脱する助けとなった「こんな言葉」を語ってもらう。

第1回は、駅構内の商業施設ecute(エキュート)など「エキナカ」の仕掛け人として知られる鎌田由美子さんにご登場いただく。

2021年3月、著書『「よそもの」が日本を変える』(日経BP)を出した鎌田さんは、現在はこだわりの素材を生かした飲料などのネット通販を手掛ける会社、ONE・GLOCAL(ワン・グローカル、東京・中央)の代表取締役を務める。平成が始まった1989年に大学を卒業し、エキナカを仕掛ける舞台ともなったJR東日本に入社。その後、カルビーの上級執行役員を経て、平成が終わりを迎えた2019年に「地域の1次産業を元気にすること」を目指し、いまの会社で事業をスタートした。だが、最初から起業を志していた訳ではなかった。

◇     ◇     ◇

働き始めた当初は「定年までこの会社にいるんだろう」くらいしか、(キャリア形成について)思っていませんでしたね。仕事のイメージを持っていた訳でもないし、その楽しさや大変さも分からない。何も目指していなかったです。「何歳で結婚して、何歳で子どもがほしくて……」くらいのところは、自分のなかできっちり描いていたところはありましたけど。

新卒でJR東日本を志望したのは3つの理由から。鉄道に興味はなかったが、駅には興味があった。

1つ目は、国鉄の分割民営化で87年に誕生したばかりで、「会社が生まれ変わったんだから何でもできるんだろう」と新しさを感じたこと。2つ目は女性にも寮があり「自分で生活できる」と思えたこと。当時、大卒女性の採用といえば自宅通勤を求める企業が大半でした。そんななか、茨城県出身で都内の大学に進学した自分のような地方出身者に対し、男女問わず門戸を広げてくれていた。それが3つ目の理由です。

鉄道に興味はなかった。だけど駅には興味がありました。大学の専攻が社会福祉で「ノーマライゼーション」という言葉が好きなんです。メンタルを含めて誰でも、どこかしら弱い部分を持っている。それがたまたま身体的なところだからといって、その人の行動が制限されてしまうようなことはない方がいい。車椅子の方であれ目の不自由な方であれ、彼ら自身が自分で何かできる環境が公共機関にはあってほしいと考えていました。その最たるものが駅だと思うんです。

先ほども申し上げたように茨城県出身なので、私にとっては子どもの頃から、東京イコール上野駅が玄関口でした。入社のとき、「たとえば上野駅で、もっとノーマライゼーションを進めて誰もが使いやすい駅をやってみたいです」と言ったような記憶はあります。その後、トンと忘れていたけれど、35歳になって、たまたま(後のエキナカにつながる)駅を変えろ、というミッションが下った際、「あぁ、入社のときも駅を変えたいと言ったかな」と思い出しました。

同時に、入社から10年以上たってもどこの駅も変わっていないな、と。相変わらず空調は効いてないし、トイレットペーパーはついたけれど、きれいじゃない。居心地はよくないし、バリアフリーじゃないし……。そんなことを改めて思いましたね。

「予定はことごとく崩れる。まあ、そういうものですよね、人生は」。プライベートでは人生設計通り、大学時代からの交際相手と23歳で結婚。しかし、「計画が狂ったのが子どもですよ」。3、4年の不妊治療を経て「家庭がとっても暗くなった。『もういいんじゃない』と諦めました」。仕事でも思わぬ事態に。思い入れのある上野駅で、当時計画されていた超高層百貨店・ホテルビル構想を担う部署に異動したものの、「配属されたその日に計画が見直しに」。しかし、そこからの日々が後のエキナカ事業への素地を培うことになる。

入社2年目に入り、同期は皆、新しい部署でバタバタ忙しく動き回って成長している。血気盛んな頃です。ところが、私だけ(計画見直しで)雲行きが怪しくなってしまって………。やる気まんまんで(新職場に)いったら、「由美ちゃんが来たけど、仕事ねえな」と。私以外は男性のベテラン社員たち10人ほどでした。プロジェクトが止まったことで、みんな、戸惑っている。やることがなくてお給料をもらっているのも何なので、JRが百貨店をつくる計画を持っていたこともあり、「百貨店のリサーチに行っていいですか」と申し出ました。すると、「あぁ、いってらっしゃい。いってらっしゃい」と。

きょうはあそこの百貨店、あしたはあそこへと、あちこちの百貨店に足を運んでは、全フロアを見て回りました。おかげでフロア構成図が頭に入りました。すると気づくことがあるんです。紳士服はフロアのどこにカジュアルゾーンがあって、どこにオーダーのゾーンがあって、あ、お店が別でもこれは一緒なんだな、と。食品フロアなら、華やかなスイーツから入って生鮮3品(魚・肉・青果)があるんだな、とか。

それが分かると、今度は例えば、食品売り場の水周りはどうなっているんだろうと知りたくなる。たまたまチャンスがあって、その水周りのことを質問できると、フロア構成図はもう頭に入っているから、店の裏側から「ここはこうなっているんですか」など質問ができる。好奇心が旺盛で、自分のエネルギーを使うことに伴うロスを恐れないタイプなんです。

当時はインターネットもありません。ですから、雑誌や新聞の記事の切り抜きを手に、休みの日には電車に乗って、おいしそうなお菓子屋さんや評判の良いパン屋さんを見て回っていました。(キャリア形成のあり方として)合っているかどうかわからないですが、一生懸命やってしまうような性格だったから、「目の前のことに一生懸命」を実践した。それが後になってエキナカ事業を手掛け、テナント誘致などをする際に生きてきた訳です。

(キャリアを重ねていって)忙しくなると、そうしたお店回りはできなくなってしまいます。土日にお店回りをしながら、キラっとしたものを探したり、「この会社はもっとこういうことができるのではないか」という目でディスプレーを見たりしたことが商業施設開発での大きな素地になりました。

自身の経験を踏まえ、「目の前のことを一生懸命やる」を後進女性たちへのアドバイスに挙げ、こう補足する。

「目の前のことを一生懸命やる」とはどういうことか。与えられた仕事をやるとしても、何をもってして100%やったといえるのか、考えてみてはいかがでしょうか。

例えば私の場合、入社当初「現場に行きたい」と希望を出したところ、その希望に沿う形で最初に配属されたのは旅行センターでした。配属されたからには「現場」なので、仕事があがったら(その日の業務が終わったら)、あっちこっち駅を見て回り、家で勉強もした。その職場に在籍したのは4カ月でした。長い期間ではありませんが、せっかくそこにいる間に試験の時期が来るんだったら、ちょっとトライしてみようと旅行業務取扱管理者の資格も取得しました。国内旅行の資格だけですけどね。

懸命にやっていると、誰か見ていてくれる人がいます。そのときも、「俺、もう取ったからな」と問題集をくれる人がいたり、「あの旅行パンフレット、見たかい? 面白いところいっぱいあるぞ」と教えてくれる人がいたり。エキナカの事業を進めていたときもこんな体験をしました。ある社内調整ができなくて困っていたときのことです。すぐにでも決めないと、プロジェクトが先に進まなくなるような切羽詰まった状況にありました。そのとき、まったく関係ない部署の人が「Aさんに『うん』と言わせたいなら、BさんからAさんに言ってもらえ」と助け舟を出してくれました。周りは見てくれているものです。

普通に仕事をしていても、一生懸命やっていればいろんなことが自然と身についていくものです。たとえ会社が評価してくれなくても、力が蓄えられていく。社外の友人たちには、テレビなどで取材があると会社内での序列を超えて、その人にオファーが舞い込むといった「この道で日本一」の人がいっぱいいます。そうした生き方もあるのではないでしょうか。

ちょっとの思いつきは誰でもできる。けれど、それを行動にまでしていく人は数%しかいないでしょう。自らが汗をかいてやった経験ほど伝わるものはないと思います。何より重要なのは行動です。共感しても、行動に移さなければそれだけで終わってしまいます。「こういうのができたらいいな」と思っていることがある人は、行動をいつどう起こすか、考えた方がいい。「何かしたい」と思うことがあるなら、小さなことでもいいから何か行動に移してみてはいかがでしょうか。

「『好きなこと』が見えてくるのは40歳を過ぎてから」。起業して取り組む今の仕事はJR東日本時代、地産品の販路拡大などに取り組んでその魅力を知り、地方や農家を元気にしたいとの思いを抱いたことから実現したものだ。「中途半端なモノは売れない。それでは1次生産者に還元できず、産地が変われない」と産地とは緩やかな関係を持ちつつ、「アウトプットはシビアに」をモットーに事業を深めていきたいと話す。大企業に勤める副業人材など5人で始めた会社は、事業をスタートさせて2年目のいま、15人に拡大。最後に、挑戦を続ける鎌田さんを支える言葉を尋ねた。

「いくつになっても初めてのことだらけ」

JR東日本でエキナカ事業を立ち上げ、39歳でその運営を担う子会社の社長に就任後、当時のJR東日本社長だった大塚陸毅さんにある懇親会で言われた言葉です。

実は経営トップになることを打診された際、1度は断りました。ビジネスには正解がありません。何が正しいのかも分からない。自分がきちんと正しい判断をくだせるか自信がなかった。

そのことを打ち明けると、大塚さんは「俺は還暦を過ぎ、社長になっても新しいことばかりだ。いくつになっても初めてのことだらけ。39歳で見えないことがわからなくて怖いと言われてもしょうがないな。人生そんなもんなのに」と笑っておっしゃいました。このなかで、先ほど挙げた言葉が特に印象に残っています。

大塚さんほどの方ですら、そうなのですから、初めてのことを恐れなくていい。むしろ、その謙虚さをこそ、見習うべきだと思いました。大塚さんはさらに、こうも続けられました。「君には良心がないのか」。「あります」と答えると、それなら大丈夫だということで全うする覚悟ができました。というのも、大塚さんとのそんなやりとりから、「経営の危機管理の基本は良心だ。それがあれば経営は成り立っていく」という風に教えていただいたように感じたからです。

完璧な人はいません。私自身は「農産物を育て加工している人の思いに触れていただけるように」と考えながら、ライフワークとしてONE・GLOCALでのビジネスに取り組んでいます。仕事と生き方は相反するものではなく、むしろ一体となってその人の人生を形づくるもの、というのが私の考え方です。皆さんのキャリアライフが「まずは行動」で幸せなものになることを願っています。

(佐々木玲子)

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