「プレスリリースのマーケ活用」新常識 第4回

メディア掲載多数、リリースの度にPR TIMESのランキングにランク入り──。そんなホットなプレスリリースを連発するのが、とんかつ専門店「かつや」だ。同ブランドの広報担当者は、プレスリリースは発信の場ではなく、ファンとのコミュニケーションの場だと語る。社内外を巻き込み、話題をさらうプレスリリースを生み出す秘訣とは。

プレスリリースづくりの秘訣を、アークランドサービスホールディングス広報担当の鈴木恵美氏に聞いた
プレスリリースづくりの秘訣を、アークランドサービスホールディングス広報担当の鈴木恵美氏に聞いた

 「自分たちがいくら一生懸命自らを語っても、それは自分たちのことを言いたいように言うだけでしかない。でも、人に言ってもらうと受け入れられやすい。だから結局、私たちの役割はコミュニケーションをとって、自分たちのことを語ってくれるファンを増やすこと」。広報活動はファンコミュニケーションだと語るのは、とんかつ専門店「かつや」の運営会社などを傘下に有する、アークランドサービスホールディングス(以下、アークランド)の社長室 広報担当マネジャー、鈴木恵美氏だ。

 鈴木氏はプレス回りやメディアへの個別アプローチをしない。にもかかわらず、かつやのプレスリリースはリリースされる度に話題となり、年間の取材件数は約100本にのぼるという。鈴木氏の言うファンとは、生活者はもちろん、プレスリリースを基に記事を書き発信するメディアなども含まれる。「このことを書いたらきっと読まれる記事になる、と思ってもらえる情報をちゃんと仕立てることも、コミュニケーションの一つ」(鈴木氏)。

 最近ではかつやの期間限定メニュー、「大人様ランチ」の大ヒットが記憶に新しい。2022年5月にプレスリリースが発表されるとSNSで話題となり、記事化や放映などのメディア展開は約50件。想定の3倍以上の売り上げとなり、売り切れになる店舗が続出した。ここ数年の期間限定メニューの中ではトップの売り上げになったというが、タイトル冒頭の「大人の食べたい叶えます」のフレーズなど、プレスリリースの随所に工夫を施したという。この価格でいろいろな具材が楽しめるお値打ち感を押し出すため、価格を強調して画像を作成。また、従来のプレスリリースには商品名を大きく載せるところを、「大人のためのお子様ランチ」というキャッチコピーを強調して画像に落とし込んだことも、目を引くポイントとなった。

大ヒットを記録した「大人様ランチ」のプレスリリース。5月までの期間限定メニューで、現在は販売終了(出典:PR TIMES)
大ヒットを記録した「大人様ランチ」のプレスリリース。5月までの期間限定メニューで、現在は販売終了(出典:PR TIMES)

 他社のものと比べると、アークランドのプレスリリースは比較的簡潔な印象だが、その中にも様々な工夫が盛り込まれている。ファンコミュニケーションの一環としての役割を追求してプレスリリースを作成すると、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」でのPV(ページビュー)・UU(ユニークユーザー)がそれ以前の約25倍に伸長した例もあるという。ファンを増やしてプレスリリースを中心とした盛り上がりを起こし、その盛り上がりがさらにファンを獲得するきっかけとなる。そんなファンを生み出すプレスリリースはどのようにつくられているのか。

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