つながらない権利の導入はリモハラの抑止に
テレワークは、これまでのように仕事ぶりが目に見えません。社員を疑い、まるで監視するようにビデオを常時接続しているようでは、とても適切に管理しているとは言えません。働き方が変わるなら、マネジメントスタイルも当然変えるべきでしょう。
まして就業時間外の業務連絡に対して、すぐに対処するように求めることは、長時間労働のリスクばかりでなく、行き過ぎれば「リモハラ」(リモートハラスメント:パワーハラスメントの一種)を引き起こしかねません。
22年4月からは、中小企業においても改正労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)が全面施行されます。パワハラとは、職場において優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることを言います。
事業主は、ハラスメントの防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられています。テレワークの際もオフィスに出勤する働き方の場合と同様に、パワーハラスメントなどを行ってはならない旨を労働者に周知・啓発するなど、ハラスメントの防止対策を十分に講じなければなりません。
就業時間外の「つながらない権利」を尊重することは、こうしたリモハラの抑止として有効と言えるでしょう。
つながらない権利を導入する際の留意点
日本では性別役割意識が強く、女性が家事や育児など家庭への責任をより多く担っていることがいまだに多いと言えます。
例えば、早めに仕事を切り上げ保育園などのお迎えや食事の支度・後片付けなどの家事をこなし、夜に子供を寝かしつけた後、仕事を再開するケースも考えられます。あるいは、子供が起きる前の早朝の時間を活用して仕事をすることが、本人にとって生産的に働ける場合もあるでしょう。
このように柔軟な働き方を認める企業においては、社員の働く時間も多様です。つながらない権利を導入する際には、深夜時間(夜10時~翌朝5時)の業務禁止は健康面でも当然のこととしても、「何時から何時までのメール送信は禁止」などの単純なルールを設けることで、柔軟な働き方をしている社員の就業を阻害することのないよう十分に配慮したいところです。例えば各人の就業時間帯以外のメールは、受信しても翌就業時間まで対応しないことなど、社内でルール化するのも一つのやり方と言えるでしょう。
技術の進歩とモバイルデバイスの普及によって、いつでもどこでも働けるようになり、仕事への柔軟なアプローチが可能となりました。その半面、仕事と私生活の垣根が曖昧となってオーバーワークになりがちな問題もあり、健康をどう確保していくかは大きな課題と言えます。
つながらない権利に関して、日本では各企業に対応が委ねられており、組織におけるルール化や配慮が求められるところです。私たち自身においても、つながらない権利について問題意識を持ち、議論を重ねていくことが大事なのではないでしょうか。
