年金は老後を中心に、生きている間中受け取れるお金です。仮に生活費に十分ではなかったとしても、細く長くもらい続けられるようにしたいもの。しかも、受け取れる金額はできる限り多くしておきたいところです。ところが、学生納付特例を利用し、追納を忘れてしまうと「猶予」しなかった場合に比べて将来の受給額は減額になってしまいます。そうなるくらいなら、義務が生じた時点からきちんと収めておく方が好ましいのではないかというのが、おすすめする第一の理由です。
それだけではありません。20歳になると個人型確定拠出年金、iDeCo(イデコ)、つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)など税制優遇を生かした投資をすることができます。特に私的年金制度のiDeCoにおいては、「第3号被保険者」と呼ばれる会社員や公務員の配偶者を除くと、国民年金保険料を納めていることが、制度を利用できる、つまり掛け金をかけられる条件となっています。
掛け金が少額であっても、将来の年金を作るにはiDeCOは良い制度ですし、長く投資で運用できれば、資産を大きく増やせる可能性も高い。学生で第3号被保険者に該当する方はごく限られるでしょうから、iDeCOを始められるようにするうえでも、特例を使わずに学生のうちから年金保険料を納めることをおすすめします。
親が払うと税控除でメリットも
20歳以上の学生の場合、年金保険料は「本人が納付」と「親が納付」の2つから納付方法を選ベます。親が納付する場合、支払った保険料の全額は年末調整、または確定申告で「社会保険料控除」として控除することができます。
では、どのくらい節税の恩恵を受けられるのでしょうか。住民税は全国一律10%です。仮に所得税率が20%の方だとすると、住民税率と所得税率を足した30%を節税できます。これを金額として、どのくらい節税できるか確認してみましょう。1年間の国民年金保険料は21年度の場合で19万9320円です。従って、この30%にあたる5万9796円を節税できることになります。
もう一つ、知っておきたいのが、国民年金には「前納割引制度」があることです。21年度の保険料の場合、現金もしくはクレジットカードで1年度分を前納すると毎月納付の場合と比べて3540円、2年度分の前納なら1万4590円が割引されます。支払い方法を口座振替にすれば、1年前納なら4180円、2年前納なら1万5850円と割引額はより大きくなります。ただし、割引額が大きい口座振替やポイントがつく場合などもあるクレカ払いは、前納の申し込み期限が早いなど現金払いと手続きが異なる点もあります。詳しくは日本年金機構のホームページで確認するなどして、「我が家に合う方法」を選びたいものです。
お子さんが医学部に進学したなどで学生生活が長いケースもありますが、一般的に学生で国民年金の納付が生じる期間は2年強。親が子どもの20歳の誕生日から次の4月までは毎月払い、その後は大学卒業までの2年分を前納にしたとします。その分、家計の負担自体は増えます。しかし、2年前納による割引も社会保険料控除による節税もできるので、お得な納付方法といえるかもしれません。しっかり納めることで、子どもの老後の年金受給額を減らす要因を1つなくせたと、親としての満足感を抱けるのではないでしょうか。
22年4月からの成人年齢引き下げは影響するか
我が家では、現在3番目の子が大学3年生。その上の子たちもそうでしたが、子どもが老後にもらう年金のため、節税のため、年金保険料は親が負担しています。その分、大学など高校以上の学校の学費は、半額を目標に家に収めるというルールを守ってもらっています。もちろん、学業が忙しくバイトができないなどで半額に満たなくても仕方がないと思っています。ただし、学費にしろルールを設け、子どもが「一部は自分で支払っている」と思うことで本人に責任感が芽生え、社会の成員としての義務感のようなものを自覚してほしいと考えています。