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新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、医療現場や一部の職場では、人手不足による過重労働の実態が明らかになりました。同時に、テレワークなどの新しい働き方が広がったことで、長時間労働による健康リスクも懸念されています。働き方が大きく変わっていくなか、2021年7月には厚生労働省の「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が変更されました。同年9月には、20年ぶりとなる労災における過労死の認定基準が改正されています。これらの双方に「勤務間インターバル」に関する規定があります。なぜ近年、「勤務間インターバル」が注目されているのでしょうか。

EU諸国で定着、日本では法律で努力義務

勤務間インターバル制度とは、労働者の終業時刻から、次の始業時刻の間に一定時間の休息(インターバル時間)を設定する制度です。たとえば、ある時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めないとすることや、終業時刻が遅くなった場合に翌日の始業時刻を繰り下げるなどの方法で、一定の休憩時間を確保しようとするものです。

欧州連合(EU)では、90年代からEU加盟国の労働者に同制度を設け、一部の職種を除き24時間ごとに最低でも連続11時間の休息期間を確保するために必要な措置を設けることとされています。インターバル時間数は、ドイツ、フランス、英国において11時間、ギリシャ、スペインでは12時間とされています。

日本では、「働き方改革関連法」(18年6月29日成立)に基づき改正された「労働時間等設定改善法」において、19年4月から勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務として規定されました。

しかし、21年の「就労条件総合調査」(厚生労働省)によれば、勤務間インターバル制度を導入している企業割合はわずか4.6%に過ぎません。企業規模が小さいほど導入割合は低く、「導入予定はなく、検討もしていない」企業が全体の80.2%と大半を占める状況です。

一定の休憩時間を確保できないと仕事の効率が低下し、過労死のリスクも(写真はイメージ=PIXTA)

一定の休憩時間を確保できないと仕事の効率が低下し、過労死のリスクも(写真はイメージ=PIXTA)

労災認定基準の改正で勤務間インターバルも追加

冒頭で触れた、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は過労死や過労自殺を防ぐための対策をまとめたものです。「過労死等防止対策推進法」によって定めることになっています。

21年7月の変更では、テレワークなどの新しい働き方がコロナ禍で広がっていることを受け、過重労働による健康障害や過労死などを防ぐために、企業における対策や数値目標などが掲げられました。「勤務間インターバル」についても、導入企業の割合を2025年までに15%以上にするとの新しい目標が掲げられました。

変更前は勤務間インターバルの導入企業の割合を20年までに10%以上とする目標を掲げていました。しかし、上記のように導入企業は5%を切る状況にとどまっています。

このため、新大綱では、労働者数30人以上の企業のうち、「勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満にすること」も25年までをターゲットに設定しました。特に導入率の低い中小企業への取り組みを強化し、目標達成を目指すとしています。

一方、冒頭で「20年ぶり」とお伝えした労災の認定基準の改正についてです。21年9月、脳・心臓疾患の労災認定基準が20年ぶりに改正されました。背景には、働き方の多様化や職場の変化に伴い、最新の医学的知見に基づき検証すべきだとの意見が検討会で出されたことがあります。

改正前は、長期間の過重業務の評価にあたり、発症前1カ月に100時間または発症前2~6カ月間平均で月80時間を超える時間外労働などが認められる場合に業務と発症との関係が強いものとされていました。俗にいう「過労死ライン」と言われるものです。改正後は、上記の時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合は、「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、総合評価して労災認定することを明確にしました。

この「労働時間以外の負荷要件」の1つとして、「勤務間インターバルが短い勤務」といった表現で新たに加わりました。上の段落でも書きましたように、こうした要件を追加していくことで単純に残業時間だけで認定するのではなく、勤務時間の不規則性なども重要な負荷要因として判断していくという訳です。

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