年金も関係する通勤手当 日額支給、移住でどうなる?人生100年時代のキャリアとワークスタイル

コロナ禍を契機に、テレワークを推進する企業が増加しています。それに伴い、地方へ移住する動きも加速。総務省が発表した2021年の「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京23区は、現在の集計方法となった14年以降初めて転出者数が転入者数を上回る「転出超過」となりました(外国人含む)。テレワークによって、移住しても時々出社することで移住後に「通勤手当」が増える場合があります。通勤手当は給与の額だけでなく、実は年金などの社会保険や雇用保険とも無関係ではありません。通勤手当の変化は、どのような影響があるのでしょうか。

テレワークの拡充で生活拠点に広がりも

Zホールディングス傘下のヤフーは、電車や新幹線、バスで午前11時までに所属先のオフィスに出社できる範囲に居住していれば、オフィス以外も含め、働く場所を自由に選択できる制度を設けています。22年4月から、さらに制度を拡充することを発表。現在は交通費の上限を片道日額6500円、月額15万円としていますが、4月から片道日額の上限を撤廃します。これにより、社員は飛行機通勤や高速バスなどの利用が認められるようになります。

同社のように、企業が通勤手段の制限を緩和し、好きな場所に居住しながらテレワークで仕事ができるように働き方の柔軟化を図る動きは、少しずつ広がっていくかもしれません。在宅中心のワークスタイルや、オフィス出社と在宅勤務を組み合わせたハイブリッド型であれば、勤務地から遠く離れた場所に暮らすことも可能になります。

このとき気になるのが、出勤する場合の交通費の取り扱いです。

厚生労働省は21年4月に「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正を行いました。在宅勤務やテレワークなどで従業員が一時的に出社する場合の電車代など交通費については、以下のような取り扱いが示されています(以下、抜粋)。

(1)当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅の場合
労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、「報酬等」には含まれない。
(2)当該労働日における労働契約上の労務の提供地が事業所とされている場合
当該労働日は事業所での勤務となっていることから、自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。

たとえば、1週間のうち2日はオフィス出社、3日は在宅勤務のようなハイブリッド型のワークスタイルの方がいたとします。この場合は上の(2)になるので、通勤手当は「報酬」に含めることになります。

毎日の出社が必須でなければ、新幹線などを利用して通勤するのも無理な話ではありません。もし、地方へ移住して通勤手当が高額となれば、どのような影響が出てくるのでしょうか。

テレワーク移住の注意点とは(写真はイメージ=PIXTA)

通勤手当増加に伴う社会保険のメリット・デメリット

本題に入る前に、まずは年金をはじめとする「社会保険料」の基本を押さえておきましょう。ここでいう社会保険とは、健康保険、介護保険、厚生年金保険の総称ですが、社会保険料は「標準報酬月額」に基づいて計算されます。この標準報酬月額には、いわゆる労働の対価だけでなく通勤手当や「家族手当」「住宅手当」といった月単位などで継続して支給される報酬(「固定的賃金」といいます)も含まれます。ここが今回、まず覚えておきたいポイントです。

標準報酬月額は入社以降は原則として、4月から6月までの平均給与をもとに算定され、その年の9月から1年間は変わりません。ただし、「引っ越した」「子どもが生まれた」などで通勤手当や家族手当といった固定的賃金に関する変動があり要件に該当する場合は、年の途中でも随時改定の対象となります。

読者の皆さんのなかにも、在宅勤務やテレワークの導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなった、あるいは支給方法が月額から日額単位に変更されたという方がいらっしゃるかと思います。こうした場合は、変更となった月以降3カ月間の平均給与をもとに変動の幅を確認することになります。月額から日額単位に変更された場合は固定的賃金の変動になりますが、日額単位の場合、月の支給額が変わっただけでは固定的賃金の変動に該当しません。

仮に固定的賃金である通勤手当が大幅に増えると同時に随時改定の要件に該当し、あなたの標準報酬月額が上がったとしましょう。その場合、社会保険については以下のようなメリットが考えられます。まず、病気や出産などで働けないときに健康保険から支給される「傷病手当金」や「出産手当金」の給付金が高くなるということです。

給与(標準報酬月額)が30万円の人が、地方に移住して通勤手当が増えることで給与が41万円になる場合で考えてみましょう。標準報酬月額が改定されて12カ月以上経過してから受けることになる傷病手当金の金額は、1日約6600円から、約9100円となり、1カ月あたり約7万3400円が増額されます(協会けんぽ東京支部の場合、以下同じ)。出産手当金は、産前産後休業期間が98日とすると、標準報酬月額が30万円の場合は約65万3300円に対して、41万円の場合は約89万3000円となり、24万円程の差になります。

また、年金の額も増加します。会社員らが受け取る老齢厚生年金に関しては、働いた全期間を対象として計算されるため単純な比較は難しいです。とはいえ厚生年金保険料の半分は会社が負担してくれるため、会社の補助を得ながら年金額を高めることができるという考え方もできます。ただし、厚生年金保険については、標準報酬月額の上限が65万円とされています。したがって、それ以上給与が増えても、年金額が増えることはありません。

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