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『#駄言辞典』について語る東レ経営研究所の塚越学さん

『#駄言辞典』について語る東レ経営研究所の塚越学さん

日経 X woman

『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP)。ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる400を超える「駄言」を、エピソードとともに紹介している本書を、東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 チーフコンサルタントの塚越学さんはどう読んだのでしょうか。

上の立場にいる人ほど率先して学ぶべきだ

『#駄言辞典』第1章にある数々の駄言の実例については、「こう言われたらイラッとするよね」「みんなもそう思ってるんだ」……と、うなずきながら読みました。第2章のキーパーソン6人へのインタビュー編も必見ですね。どうインタビューしたらこんなに読み応えのある内容になるんでしょうか。それぞれの立場の人が、この問題をどう見ているかが克明に描かれていました。

立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんはズバリ、「駄言が生まれる理由は不勉強だ」と述べていました。確かに皆が出口さんのように勉強すれば、駄言はなくなるだろうと思います。

でも、正直に言うと、実際に出口さんレベルまで勉強できるかというと、しんどそうだな、とも思ってしまった。さまざまなテーマの情報を、努力して自分から取りにいかなければいけませんからね。でも、そんなことを言っていられないのも現実。経営者や組織の中で上の立場に立つ人は、率先して勉強する必要があります。

複数の調査により、組織の中で高いポジションにいる人ほど、言いたいことを言えているという事実が分かっています。逆に、配下の人たちは言いたいことをあまり言えていません。だからこそ、高いポジションにいる人は自分の価値観をアップデートし続け、配下にいる人たちが本音を言い出せるような心理的安全性を確保する必要がある。上位者にとっては、それも大事な仕事の一つなのです。

また、組織の上のほうにいる人ほど、自分が思ったことをすぐ言ってしまう傾向があると思います。上にいる人に必要なのは自分の発言に対する慎重さです。思ったことを瞬発的に言うのではなく、「自分が今から言おうとしていることの背景には、何らかの思い込みがないだろうか」「これを口にしたら相手を傷つけないだろうか」と、ひと考えしてから言葉を発すべきです。

『#駄言辞典』の第2章で、心と体の性が一致しないトランスジェンダー活動家の杉山文野さんが「知らなかったでは済まされない駄言もある」と述べています。ポジションが高い人ほど、「知らなかったでは済まされない」ケースが多くなると思います。

例えば、組織の上層部にいる人は、若いとき、ある程度のプレッシャーの中で歯を食いしばって実績を上げて、今の地位に来たという自負があるのかもしれない。それを踏まえて、過去の自分がしたのと同じような負荷の高い働き方を部下に求めてしまい、よかれと思って言葉でプレッシャーをかける場合もあるでしょう。子を思って余計なことを言ってしまう親の振る舞いと似ていますよね。でも、自分が若いときとは時代や価値観が変わっている可能性が大いにあります。だからこそ、今の若手の価値観などを知るように努力すべきです。

客観的な事実も、時代とともに変容する

第2章の野田聖子少子化相(取材時は自民党幹事長代行)へのインタビュー記事では「多様性のない社会は不自然だ」という考えの中で、「自分たちから見れば納得のいかない意見をも受容できなければいけない」と書かれていました。私は「確かにそうだよな」と思う半面、間違った事実に基づいた考えは正す必要があるとも思います。「1+1は3だ」という意見まで受容していては社会を形成していくのは大変です。「1+1は2」という客観的な事実に基づいた上で、「1+1は3」になる場合だってあるという主観的な事実(それぞれの考えやアイデア)が受容されるなら良いと思います。

ただ、この客観的な事実というものがくせもので、これは時代とともに変化する場合があります。例えば、脳の研究は日進月歩で、昔とは全く異なる新しい事実が解明されてきています。このことからも私たちは、「これまで事実だと思われていたこと」から離れ、「今、新しく事実だと分かっていること」を共通の知識として身に付ける必要があるわけです。駄言は「起きた現象」に対する「自身の固定観念(客観的な事実だと思い込んでいるもの)」とのギャップからも生まれるでしょうから、やはり、出口さんが指摘している通り、駄言をなくすためには、日々の勉強が大事なのでしょう。

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