指輪の輝き多彩に　ネイル引き立て、子育て配慮

「あれいいな」。自宅でテレビを見ていた東京都渋谷区の会社員坂井玲子さん（40）の目にとまったのは若手女優の指先だ。「指輪を指の関節につけているのが新鮮でおしゃれに見えた」。ジュエリーショップを回り、店員に尋ねたところ、目当ての品が「ミディリング」と呼ばれる指輪だと知った。

坂井さんは仕事で段ボールを持ち運ぶこともあり、指輪をつけるのを避けていたが「実際、つけてみると気分が上がるし邪魔にもならなかった」。中心価格帯2万円前後と比較的手ごろな価格で購入できることもあって、今春から集め始めたミディリングなどは10個近くまで増えた。

2つの指輪がチェーンで連なったミディリングを愛用する東京都中野区の主婦安達和実さん（33）は「単色塗りでもネイルが映える。気分に合わせてつけたり外したりが簡単にできておしゃれの幅が広がった」。

東京都練馬区の会社員上野友美さん（31）は「小指につけるピンキーリングとしても使える。重ね付けしやすいのもいい」と話す。

指の関節など、中間の位置につける指輪は「ミディリング」のほかに「ファランジリング」とも呼ばれる。ミディリングは米国を中心に海外のブロガーが「指が細く見える」「ネイルアートが引き立つ」と紹介したことで人気に。日本のファッション誌でも取り上げられる機会が増えている。

宝飾品販売のスタージュエリー（横浜市）が昨年末から20代向けブランド「スタージュエリーガール」でミディリングを売り出したほか、ユナイテッドアローズも今年秋冬向けジュエリーのなかで「ファランジリング」を前面に打ち出す。重ね付け需要や若年層の取り込みを狙い、各社が戦略商品と位置付けている。

新たな視点から生まれた指輪も注目を集めている。出産記念のジュエリーでは、赤ちゃんの指サイズのリングをネックレスとして着用するベビーリングが有名だが、記念に加え「ママのため」に重きを置いたコンセプトの指輪はなかった。

「ネックレスに限らずジュエリーを着用しての育児は子どもを傷つける不安がある。安心して身につけることができて、おしゃれとしても楽しめるような商品を作ろう」。ジュエリーブランド「Nakorika」の代表で企画やデザインを手掛ける神田里奈子さん（33）は、長女の誕生をきっかけに育児や家事の邪魔にならない「ママのための指輪」を作ることを決め、2012年から凹凸を極力なくすなどして安全に配慮したデザインの指輪「マミーリング」（同2万円前後）の販売を始めた。

今年3月に長女を出産した埼玉県草加市の主婦三田由里子さん（34）は出産の記念にマミーリングを購入。指輪に長女の名前などを刻印し、お母さん指とも呼ばれる人さし指につけている。「コンセプトに共感した。ネイルができない分、指輪で手軽におしゃれも楽しめるのがいい」。滋賀県栗東市の主婦、長山陽子さん（39）は「子どもが成長したら譲りたい」と話す。

男性向けの指輪も多彩に。これまではシルバー製の重厚なファッションリングが主流だったが、幅の狭い細身のタイプやピンキーリングが売れているという。

ザ・キッス（東京・渋谷）は昨年男性向けブランド「ザ・キッス　ブラック」（同1万5000円前後）を立ち上げた。ファッションとして日常的に指輪を身につける男性が購入するケースも増えているといい、今後もラインアップの拡充を計画している。スタージュエリーの男性向けジュエリーブランド「エスジェイエックス」では18金で10万円を超す指輪をピンキーリングとして愛用する人もいるという。

ジュエリーの企画や製造を手掛けるアトラス（甲府市）では、女性が男性に指輪を贈るケースも増えていることから、数年前に全体の5%ほどだった男性向けジュエリーの売上高が現在は15%を占めるようになった。

おしゃれ心に加え、人々の様々な思いがこめられた指輪。これからますます指回りが華やぎそうだ。（鷹巣有希）

［日経MJ2014年7月9日掲載］