新たな美の聖地「ギンロク」 大人のサロン続々
「落ち着いた一見銀座らしくない場所」
「緑が多くて明るくて気持ちがいいです」。6月1日、銀座6丁目にオープンした美容室「オブヘア銀座店」。初日に訪れていた横浜市在住の主婦(45)はこう話した。
ネイルや頭皮にマッサージなどを施すヘッドスパを受けられる美容室に加え、理容室も併設するオブヘア初の複合サロン。東京や神奈川に店舗展開するが古里オサム代表は「銀座への出店は挑戦であり、集大成」と話す。
そんな銀座の中で選んだのがギンロクだ。「出店場所として4丁目も薦められたが、落ち着いた一見銀座らしくないこの場所を選んだ」(古里代表)。店内に入ると、窓から向かいの泰明小学校の青々とした木々が目に飛び込んでくる。施術を受けている際も鏡に緑がうつり込む。
そのほか、青山を中心に人気の美容室が多く登場。2006年に東京・原宿に誕生した「ガーデン」は、現在銀座エリアに3店を展開。6丁目の「ドライブ フォー ガーデン」は12年11月に2丁目から移転した。「ミンクス」も「ダーリング プレミアムミンクスギンザ」を12年3月に出店。昨年10月には2丁目にも出店した。
ギンロクの新顔は美容室以外も。5月に約1年のブランクを経て移転オープンしたのが、せっけんやオーデコロンなどを扱うイタリアの「サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座」。800年近い歴史がある世界最古の薬局の国内旗艦店だ。
松坂屋跡、再開発にも期待
昨年12月には理容室「ネクサス銀座店」も開店した。運営するCEPホールディングス(千葉県浦安市)の猪爪一徳代表取締役は「銀座で10カ所はあたった。ここにしたのは松坂屋の前でユニクロの隣と、銀座に詳しくない人にも伝わりやすいから」と話す。
「美容に最もお金をかける世代が40代になり、サロンも大人化する必要がでてきた」。リクルートライフスタイルのビューティ総研の野嶋朗センター長は美容ジャンルの「主役」の変化が、銀座への出店を後押ししているとみる。「表参道や原宿で、若い人と並んで施術を受けるのを好まない人も多い」
同時に銀座も変わった。07年に有楽町マルイ(東京・千代田)やマロニエゲート(銀座2丁目)が開店し、2~3丁目がにぎわい始めた。その後は、H&Mやジーユーなどのファストファッションの出店が、特に5~7丁目を中心に相次いだ。「銀座の中心顧客であるシニア層より若い世代を中心に、人の流れが5~6丁目方面に強まっている」。20年以上銀座に店を構える田谷の竹知城治専務取締役はこう見る。
賃料相場をみると、5~8丁目は1~4丁目に対して比較的安価。「ただ、7~8丁目は飲食店の印象が強い。結果として、おのずと6丁目が選ばれている」(野嶋センター長)
もう一つ忘れてならないギンロクの魅力が、周辺の開発だ。中央通りを挟んだ向かい側の松坂屋銀座店跡(6丁目)は、16年秋にも銀座地区最大の商業施設が開業予定。隣の5丁目では、15年秋の開業を目指して銀座TSビル跡地の再開発も進んでいる。
「松坂屋のリニューアルなどで、周辺がにぎわうと踏んだ」(「ガーデン」の別所寛政マネージャー)出店も目立つ。不動産情報サービス大手のCBRE(東京・千代田)の福井志奈ディレクターも「5~6丁目の開発はかなりの坪数に上る。さらに人の流れが変わり賃料も上昇する可能性がある」とみる。
「銀座にあることで、海外にも自社ブランドを知ってもらえる」と指摘するのは中国などで現地の美容師向けに技術講習を実施する「ミンクス」の菅野久幸銀座店代表だ。海外展開を視野に入れる美容室からはこうした声も多く聞こえた。銀座はギンロクという新たな美容スポットを加え、街のブランド価値をいっそう磨くことになりそうだ。(井土聡子)
[日経MJ2014年6月27日掲載]
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