ウエストゴム…20代女子は「楽ちんファッション」
「スカートのウエストはゴムがいいですね。一見ベルトみたいだし」。こう話すのは神奈川県内の大学4年生だ。
20~30代に人気があるベルーナのファッション通販カタログ「RyuRyu(リュリュ)」で、パンツとスカートの最強アイテムが「ゴム入りウエスト」のもの。人気上位の「パンツインフレアースカート」(税別、1990円)は後部がゴムで、おなか周りを圧迫しない。
しかし、ゴムウエストといえば中高年向けで「ださい」「だらしない」印象ではなかったか。
最近のトレンドは、カットソーやシャツをボトムスの中に入れる「ウエストイン」。「でも、ウエストが苦しいのは嫌なんです」(都内の大学2年生)。そんな悩みをとらえて、通販各社は「楽ちん」アイテムをそろえた。「トレンドを追いかけたいが無理はしたくない、という20代が増えた」(ベルーナの高野綾子チーフMD)。リュリュでは2014年夏号の戦略商品の6割をゴム入りにし、今秋冬号ではさらに割合を引き上げる。
そごう・西武では4年前と比べて、ウエストがゴムのボトムスの品ぞろえが5割増えた。「以前はミセスに特化したブランドが主流だったが、若年層にも広がっている」という。
「手間をかけたくない」のも最近の傾向だ。三陽商会の「マッキントッシュ フィロソフィー」は今春夏物で初めて、通常丈のパンツの生産をやめ、すべて7~9分丈にした。足首を見せるトレンドに合わせ「面倒な裾のお直しが必要ない」パンツは売りものになると踏んだ。
「お直しをしなくて済むので楽」と話すのは東京女子大学4年の河瀬杏奈さん。短め丈はパンプスにもぺたんこ靴にも合い、靴を選ばない。
「痛みをこらえてピアスの穴を開けるなんて」――。約500人の女性客に実施したアンケートを受けて、伊勢丹新宿本店(東京・新宿)はアクセサリー売り場でイヤリングの品ぞろえを増やしている。3月時点では前年比約2割増だ。20代には必須と思われるピアスだが、「『高校から大学にかけて頑張ってピアスをあける』という習慣がなくなりつつある」と、装身具担当のバイヤー、小林美穂さん。
そこでアクセサリーブランドと企画したイヤリングのみのブランド「ジュエッテ ミミカザリ」を立ち上げた。小さい留め金でピアスのように見えると好評で、13年10月~14年3月の同ブランドの客は前年同期比35%増えた。世代別にみると、けん引役は同45%増の20代だった。
通販大手のフェリシモの雑貨カタログ「Kraso」でも、耳たぶ全体を挟む「耳に寄り添うイヤクリップ」(1944円)が人気。3月の発売以降、5月中旬まで累計約2500個が売れた。
一方で、見えない部分への投資意欲は旺盛だ。
夜眠るときに着用することで胸をケアする、ワコールのブラジャー「ナイトアップブラ」が20代に売れている。13年の売り上げ(出荷ベース)は16万枚と前年比で41%増え、20代のシェアは29%と各世代の中でトップ。「胸の加齢は、20代から始まっている」という同社の啓発活動が、20代に響いた。
価格は4104円。決して安くはないが、「寝ている間にもきれいになりたいという気持ちの表れ」と、ワコールのインナーウェア商品統括部の二宮敏郎さんは話す。
ライオンが2月に発売した脇の汗を抑える「Ban汗ブロックロールオン」(約650円)は20~30代に支持されて4月に入り計画比4倍の伸びを見せる。「永久脱毛をする20代が増え、脇への意識が強い。汗対策などには非常に敏感」(ビューティケア事業部の大古勝朗さん)
ウエストを締め付けないのと同様、20代が求めるのは「快適さ」。ユニ・チャームによれば20~30代女性への調査で、潜在需要が高まっているとみているのが、女性のデリケートな部分の肌に使う「ソフィデリケートウェットシート」(税別、215円)。この春販促を15年ぶりに再開した。
「自分を大切にしたいという気持ちが強まり、少しでも不快感を減らすための商品を求める傾向にある」と同社。自分自身をいたわるためへの投資は惜しまない、という姿がうかがえる。
(大岩佐和子、井土聡子、野場華世)
[日経MJ2014年6月2日掲載]
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