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規範なき時代の悲劇 ズビャギンツェフ「リバイアサン」

カンヌ映画祭リポート2014(11)

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NIKKEI STYLE

会期も押し詰まった23日、コンペ部門に強力な作品が現れた。2003年に「父、帰る」でベネチア映画祭金獅子賞を獲得したロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の新作「リバイアサン」である。

美しい海辺の町で起こる権力抗争と小さな家庭の崩壊

舞台はロシア北部のバレンツ海に面した小さな町。クジラもやってくる入り江を望む家に住むコリアが主人公。若く美しい妻リリア、前妻との間にできた息子ロマと暮らしながら、自宅の隣で自動車修理店を営んでいる。

悪徳町長はコリアの商売と土地を狙っていて、買収をもちかける。生まれた時からこの美しい入り江に住むコリアは同意しない。コリアは強欲な町長の策略に対抗するために、その弱みをつかもうと考え、モスクワの弁護士を雇うが……。

何より海辺の光景に圧倒される。薄暗い海面がざわざわと波立ち、どんよりした雲が低く垂れこめる。潮が引いたあとには廃船が横たわり、岸に打ち上げられた巨大なクジラが白骨化している。単に美しいのでなく、荘厳ささえ感じさせる。

そんな自然を前にして、人間たちの心には欲望が渦巻いている。土ぼこりのたつ道路はトラックが往来し、この地に開発の手が伸びていることを物語る。町長は町の名士たちを巻き込み、貪欲に利権を確保しようとする。そして弁護士にも別の小さな欲望が目覚める。

政治の腐敗もひどいが、平穏に見える庶民の家庭も簡単に壊れていく。社会のモラルそのものが崩壊に向かっているのだ。そこに急速な経済発展を遂げるロシアのゆがみが反映しているが、日本も含め世界中どこも同じようなものだろう。

規範なき時代の悲劇を、田舎町の権力抗争と小さな家庭の崩壊を通して描き出すズビャギンツェフの力業は相当なものだ。昨年のカンヌで見たジャ・ジャンクー監督「罪の手ざわり」に通じる映画作家の志の高さを感じた。パルムドール争いに割り込むに違いない。

「マミー」 はじけた人物たちの、はじけたドラマ

「わたしはロランス」で鮮烈な映像美を見せつけたカナダの25歳の新鋭グザヴィエ・ドランも初めてコンぺに登場した。22日に公式上映された「マミー」である。

冒頭から、はじけた人物たちの、はじけたドラマが展開する。自動車が衝突し、頭から血を流しながら現れるママ。このダイアンという女、タフで、口が悪く、粗暴だ。暴れん坊の息子スティーブと言い争っても、取っ組み合っても負けない。

そんな2人が争っているとき、向かいに住む主婦カイラが現れる。カイラは2人とは対照的にもの静かで優しい。ただ何かのせいで言葉がうまく出てこない。注意欠陥・多動性障害(ADHD)のスティーブはやはり心に欠落感を抱えたカイラにひかれる。魂が救われ、明るさを取り戻す。

不思議なことに冒頭から中盤まで画面はずっと正方形で展開する。ドランは「四角形は完璧な形で顔を際立たせ、ポートレートとして理想的だから」と理由を説明するが。確かに強烈な登場人物に焦点を当てる前半のドラマの狙いにはあっている。ドランの冒険心の表れだろう。

ただ、真四角な画面の左右の黒みの部分がないことで、イメージが飛躍する余白が最後までなかったという気がした。「わたしはロランス」で見せた奔放な色彩の乱舞のような視覚的カタルシスに欠けるのだ。

「ジミーズ・ホール」 ケン・ローチ監督の手堅い秀作

22日に公式上映されたカンヌの常連、英国のケン・ローチ監督の「ジミーズ・ホール」は手堅い秀作だった。

パルムドールを獲得した「麦の穂をゆらす風」と同じアイルランドが舞台。時代は同作が描いたアイルランド内戦から約10年後の1932年に始まる。主人公ジミー・グラルトンは共産主義者のリーダーで、米国に10年も強制追放されていたが、年老いた母を世話するため故郷に帰ってきた。

ジミーは村にホールを開く。内戦の傷がまだいえないアイルランドで人々に自由な心をもってもらうためだ。ダンスを踊り、歌をうたう。民話や神話を読み、絵を描く。ボクシングも教える。

20年代をジャズエージのニューヨークで過ごしたジミーは新しい音楽であるジャズを聴かせる。音楽好きのアイルランド人はすぐ気に入って、レコードにあわせて踊る。

しかし共産主義を目の敵にする官憲や教会はジミーの活動をことごとく妨害する。教会は場所を貸すのを断り、礼拝でジャズの害悪を説き、ジミーのホールに行った者を名指しで批判する。官憲は何度もホールに踏み込み、ついにジミーを逮捕する。ホールは焼き打ちされる。

ビートルズがアイリッシュの伝統に黒人音楽を融合させたのに先立つこと30年、ジミーのホールにはどんな音楽が流れていたのだろう。映画を見ながら庶民の歌の強さを感じたのは、そこに自由への希求があるからだ。ケン・ローチの一貫したテーマである。

河瀬監督「2つ目の窓」 現地メディアの評価割れる

2週目の半ばを過ぎると日刊の業界誌も薄くなる。各誌の星取表でおしなべて評価が高いなのはヌリ・ビルゲ・ジェイランとダルデンヌ兄弟。ただズビャギンツェフなど会期終盤の作品は対象に含まれていない。

河瀬直美「2つ目の窓」は賛否が割れた。ルモンドは「生と死の間の泳ぎはパルムドールに値する」「人間と自然の共生について問いかけ、我々を取り巻く世界のもろさについて我々に気づかせようとする」と絶賛。フィガロは「あまりに長すぎる。ムラのある水底にとどまっている」「哲学的な思想をはばかることなく表現したようなセリフは時々もったいぶったようになる」と批判した。

(カンヌ=編集委員 古賀重樹)

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