団体スポーツ、おひとりさま歓迎 初心者もOK
「……パスします!」。「あ、はい!ナイスパスです!」。ここは東京・日本橋にある「中央区総合スポーツセンター」。中では20人程度の男女が4チームに分かれ、5対5のフットサルを楽しんでいる。初対面の人同士が多いせいか、掛け声はサッカーチームの試合よりも幾分控えめで、連携プレーもどこかぎこちない。グラウンド脇で待機している選手たちも本を読んだり、パソコンのキーをたたいたりとかなり自由だ。
2006年から運営するのはAIRI(埼玉県川口市)。週に6日、1日に2~3回のペースで「個人参加フットサル」を都内で開催している。参加料金は男性が1回2000円、女性は1000円だ。
会社を立ち上げた森淳一郎氏は以前、スポーツ用品メーカーに勤務。当時の取引先や知り合いと話す中で、家族や仕事の都合で人が集まらないフットサルチームが多くあると知り「商機を見いだした」という。
現在の登録者数は約2万人で、女性の申し込みも4割程度ある。2年ほど前から申し込む人が増え始め、その数は当時と比べて1.5倍になった。ここ数カ月はほとんど予約でいっぱいの状況という。
この日参加した会社員の宇根大介さん(36)は週に1度、個人参加のフットサルで楽しんでいる。「前はチームに所属していたが、結婚してからは自由に活動できなくなった。ここだと自分の好きな時にだけ参加できるので便利」という。
練習が無いのも魅力の一つ。参加した31歳の女性
会社員は「学生時代は試合は好きだったけど、練習は厳しくていやだった。ここだと練習をする必要も無いし、ミスしても怒られないから気楽」と話していた。
子供が自由に参加できる競技団体もある。大阪府東大阪市にある「東大阪アリーナ」では、東大阪スタジアム(大阪府東大阪市)が運営し、子供も参加できる個人参加型のバスケットボールを週に1度開催。料金は2時間で500円だ。
1回に20人程度参加が可能。主な利用者は20~30代だが、年齢制限を設けていないため、小学生で地元のバスケットボールチームに通う子供たちも多い。
大人の参加者は学生時代以来久しぶりに再開する初~中級者が中心のため、経験が少ない子供でも参加しやすい。この日参加した小学5年生の男の子は「大人と練習する機会は普段ほとんど無いから、勉強になる」と笑顔で話す。
競技人口が少ないスポーツにも広がってきた。インドアのビーチバレーコートがある「コナミスポーツクラブ府中」(東京都府中市)では、週に3回、夜8時から個人参加型のビーチバレーを実施している。その日来た人を数チームに分け4対4か2対2で、順番に試合をしていく。
室内にあるビーチバレーコートは都内でも珍しいため、遠方から参加する人も多い。参加した会社員の石川智二さん(36)は、仕事帰りに1時間以上かけてコートにやってきた。「ビーチバレーは競技人口が少ないから、チームをつくって試合をする機会も少ない。その点ここだといつでも練習に参加できる」という。
昨年8月に文部科学省が公表した「体力・スポーツに関する世論調査」によると、1年以内に「運動・スポーツを行わなかった理由」の一番の理由は「仕事(家事・育児)が忙しくて時間がないから」で、50.7%を占め、09年と比較すると1割程度上昇している。
一人でも参加できる競技団体は一般的なチームと比べて、"ゆるい"プレーが許容され、人間関係のわずらわしさもない。今後、さらに受け皿が増えることで、スポーツ愛好者の裾野も広がりそうだ。(出口広元)
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