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愛知県美術館「シャガール展」 音楽から生まれた絵画が奏でる豊かな「響き」

2014/5/27

壮麗な装飾が施された内装が印象的なパリのオペラ座。現地を訪ね、1階の客席から天井を見上げると、中央にあるシャンデリアを囲んで空間を彩っている幻想的な絵画に目が向く。描いたのはマルク・シャガール(1887~1985年)。帝政時代のロシア(現ベラルーシ)に生まれ、フランスを主舞台に活動した画家だ。名古屋市の愛知県美術館で6月8日まで開催中の「シャガール展」は、オペラ座などの舞台に由来する美術や壁画、ステンドグラス作品などシャガールの大きな仕事に焦点を当てた企画。美術は空間の中でいかに生きるのか。そんな根源的な問題をも考えさせてくれる。

当時のフランスの文化大臣アンドレ・マルローの依頼で1963年に完成したこの天井画に描かれているのは、モーツァルトのオペラ「魔笛」、ベルリオーズの劇的交響曲「ロミオとジュリエット」、チャイコフスキーのバレエ音楽「白鳥の湖」などヨーロッパの14人の作曲家が残した舞台音楽に由来するモチーフの数々。羽が生えた何人かの人物は天井に自然になじみ、現実の空とは違った鮮やかな赤や緑が幻想性を高める。もともと夢の中の情景を描いたかのようにモチーフを浮遊させるのが、シャガールの作風。劇場のような大きな空間の天井に飛ぶモチーフを配するのは、画家にとって極めて自然なことだったに違いない。

最初の展示室では、画家後半生の代表的な仕事となったオペラ座天井画成立の背景と魅力の源泉がひもとかれている。さすがにオペラ座の天井画そのものを日本に持ってくるわけにはいかなかったようだ。だが、シャガールが1年をかけて制作したというこの大作には、数多くの下絵が残されていた。この展覧会に出品されたたくさんの下絵には、シャガールの様々な思いを読み取ることができる。

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