女子高生「回転ずしなう」 カフェ感覚でわいわい
マック、サイゼリヤと「黄金ローテ」
「第二ボタンもらっちゃった!」。3月下旬の昼すぎ、くら寿司足立江北店(東京・足立)に訪れた山崎馨さん(17)は同級生2人と恋愛話で盛り上がっていた。「話題がなくなってもツイッターとかをいじってだらだらおしゃべりする」。デザートなども食べ、会計は一人1000円前後になる。
マクドナルドやサイゼリヤも彼女たちやクラスメートの常連の店だ。山崎さんの同級生はマクドナルドではデザートやポテトを注文(平均約500円)し、「テスト勉強しながら食べることが多い」という。サイゼリヤでもデザートやドリンクバーを注文(同)する。
こうした"黄金ローテーション"はたまたま近隣に店が並ぶこの地区だけではない。東京都江東区在住の中森梓さん(17)は「友達と行くならマックとサイゼ、スシローの3択。最近、急に同級生の間で回転ずしに行く人が増えた」と話す。
この3択に共通するのは安さだが、回転ずしは「ついつい流れている皿をとって、結果的に1500円ぐらいになることも」(都内在住の女子高生)。高校生にとって決して安くない金額だ。
それでもコストパフォーマンスが良いイメージがあるのは「たばこを吸う人がおらず、落ち着いて話せる」(本間優子さん、17歳)といった居心地の良さがあるため。「ファストフードとファミレスだけだと栄養が偏る気がする」(鈴木祐美香さん、17歳)という声もある。
デザート充実、居心地良く
デザートなど、すし以外のメニューを充実させている回転ずしチェーン側の施策も奏功。昨年12月にコーヒーを導入したくら寿司はデザートを増やした。昨年末に「スイーツだけでも、スシローへ。」と広告を打ったあきんどスシローも4月から「苺ミルフィーユパフェ」や「スシローのラーメン 出汁入り鶏がら醤油味」の販売を始めた。
スシロー江坂店(大阪府吹田市)では「最近、昼食と夕食の間のアイドルタイムに学生が増えた」という。回転ずしは家族客の食事というイメージが強いが、女子高生にとっては「つまみ食い」の感覚に近い。
「回転ずしは好きな物を少しずつ食べられるのが魅力。すしより先にデザートを注文する子もいる」と話すのは、同店の常連で今春、高校を卒業した乗上千都さん(18)。友達同士でおなかの減り具合や食の好みが違っても気兼ねなく注文できる。
乗上さんは中学時代の同級生3~6人でよく来店するが、第一の目的は食事というより「おしゃべり」。恋愛話や学校の話で盛り上がって2時間以上いることもある。「受験や部活で忙しいときの息抜きとして、大事な時間だった」と振り返る。スシローではいつも友達とスマホで写真を撮り、ツイッターに投稿する。来店するのは珍しいことではないが「な
んとなく、楽しい時間の記念」で投稿するという。
SNS世代、大事な「リアル」の場
電通で若者文化に詳しい西井美保子氏によると「コスパを重視するのは以前からだが、『500円で3時間も過ごせる』といった時間対効果に最近の女子高生は反応する」。友達と気が済むまで話ができるというのは彼女たちにとって価値の1つだ。
こうした価値観に拍車をかけるのがSNSの浸透だ。電通が昨年実施した調査によると、高校生がLINEなどでメッセージを送る頻度は1日平均24.5回に及ぶ。ツイッターの投稿は同17.2回だ。「1日5時間ぐらいスマホを見る」(山崎さん)という生活が当たり前。「SNSの浸透とともに、一人あたりの"友達グループ"の数も増え、多忙になっている」(西井氏)
回転ずしでガールズトークに花を咲かせる女子高生。彼女たちにとっては、決して暇を持て余しているのではなく、必要不可欠な時間なのだ。女子高生の「時間消費」の場と見ると、ファストフードもファミレスも回転ずしも同じ土俵にある。(安田亜紀代)
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