こんな人いる! 画像合わせた「平均顔」の魅力
就活生向けの社員紹介に登場
「やっぱりイケメンなんだね」「ビジュアル平均レベル高い」「いや、なんか遊んでそうだしうざそう」――。
2月26日、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズが、インターネット上で若手社員の「平均顔」を発表すると、ネット上では様々な声が上がった。公開された平均顔はさわやかな雰囲気の若い男女2人。両社の入社1~5年目の男女計498人の顔を撮影し、画像を合成して別の画像を作る「モーフィング」という技術を用いた。
ネット上に突然現れたこの2人。2015年度入社の採用活動の一環で、彼らの役割は就活生向けの社員紹介だ。これまでは会社を知ってもらうために、社員アンケートを実施していたが「それをそのまま見せるのではなく、おもしろがって見てもらえる方法を考えた」と博報堂の人事部の金丸紀之マネジメントプラニングディレクター。
「実は僕ら自身が『平均社員』を見てみたかった」というのも本音だ。企画や技術面で、グループの博報堂ケトルと博報堂アイ・スタジオの協力を得て、顔だけでなく、身長や体重、住所なども平均を算出して公表している。
反応は上々で、公開後1カ月でサイトへの延べ訪問数は15万を超えた。「社内にこんな人『いるいる』と思うけど、実際はいない。とらえどころがなくて、少し小生意気な感じもある」。金丸さんは出来上がった平均顔をこう評する。賛否の声があったが「良くも悪くも会話になるし、これがうそのない平均。平均だから公開できる情報もある」。なぜか「平均」には寛容になれる。
「アイドル」と「私」を重ねると…
撮った写真などをもとに個人でも手軽に平均顔を作れるのが、アイフォーンのアプリ「平均顔 Average Face」(200円)。口コミで広がり、ネット上には作成された様々な平均顔が存在する。「女子中高生が、好きなアイドルや有名人と自分の顔の平均顔をつくるケースが多い」と開発者の瀬山淳一郎さん。「愛情表現のひとつに感じる」という。
アパレル販売員、教師、秘書、研究者――。求人情報のリクルートジョブズは、昨秋からネットで職業別の平均顔の公開を始めた。現在120種類を公表している。
この平均顔は、同社が手がけたアプリ「カオメラ」を元に収集、作成したものだ。人相科学者の石丸賢一氏が監修し、顔写真を撮影すると、輪郭や目などを把握して「慎重・大胆」「ロマンチスト・リアリスト」といった顔の印象を診断するアプリ。この利用データとして集まった2万枚の写真を職業別に分類し、各職業約50人が合成できたところで、平均顔を公開する仕組みだ。
「言葉にしがたいが、職業ごとの違いが見えてきた」と、アプリ開発を手がけたメディアプロデュース統括部の梅原大樹さんは話す。
強い個性が薄まり整った印象に
実は平均顔は、心理学の分野などで研究されている。「平均顔は整った顔立ち、魅力的な顔にみえる」と同志社大学心理学部の竹原卓真准教授。海外ですでに論文が発表されており、平均化することで個性やネガティブな要素が消えていくためとみられている。「例えば極端に太い眉毛など、逸脱した要素が薄まる」。どおりで、平均顔にみせられ、引き込まれるわけだ。
魅力的な顔とはどんな顔か。竹原准教授は「顔の印象や表情についての研究は100年以上前から進められていた」とも。魅力的に思われたいという人の気持ちは、いつの時代でも変わらない。
ちなみに、今回博報堂に依頼し、MJトレンド面を担当する女性記者5人の平均顔を作成してもらった。少しは魅力的にみえているはずなのですが……。(井土聡子)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。