あえて白靴下…「ちょいダサ」着こなす男たち
コーディネートに「抜け」をつくる
「白ソックスを合わせることで、全体のバランスが崩れてきれいにまとまりすぎないんです」。都内の会社員の奥州谷知宏さん(30)。ジャケット姿の足元を見ると、白い無地の靴下だ。10年ほど前から持っていたが、最近履く頻度が増えているという。「コーディネートに『抜け』や『隙』ができる」
男性ファッションでは靴下はパンツか靴の同系色というのが一般的。白は「小学生っぽい」イメージもあり、特にスーツなどのきっちりとしたスタイルには、カジュアルすぎる理由からご法度だった。
それが今、あえて白い靴下をはく男性が増えている。靴下専門店のタビオでは2月、紳士の白い靴下の売り上げが前年同月と比べて3割増えた。都内の店舗を中心に人気が高まっている。
メンズ営業部の竹内正課長は「白い靴下自体はおしゃれなアイテムではない。20代を中心にそれをあえてはくことで、少しださく見せるのが逆におしゃれという感覚がある」と話す。
ツータックパンツは「新感覚」
腰回りにタック(つまみ)を入れたパンツ。中高年男性の体形に合うため、こちらも"おじさん"風の服装の代名詞だったが、最近若い世代にも広まってきた。
伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)の20~30代前半向けの売り場「アドバンス」は「少し大きめのオーバーシルエットなど、定番ではない新感覚の紳士服を扱っている」(担当の飯塚裕之バイヤー)。
昨年9月、顧客の声を受けてオープンし、現在取り扱う約40のほとんどのブランドでタック入りのパンツを扱う。「体にぴったり沿う細身のスタイルから、男性の着こなしのバランスが変わってきている」(飯塚バイヤー)
昨夏からツータックパンツに着目しているという都内の美容師の小田昌弘さん(34)は、愛用する緑のゆったりしたパンツが、少しレトロでかわいらしい雰囲気だ。ただ「一歩間違うとおじさんやヤンキーっぽくなってしまうので気をつけています」。
かぶらない「デニム オン デニム」
もうひとつ、春らしい日が増えて街に登場してきたのが、Gジャンやデニム素材のシャツに、ジーンズを合わせる「デニム オン デニム」スタイルだ。これも「日曜大工好きのお父さん」のようになりがちだが、大学生の小玉拓良さん(22)は「だからこそ人とかぶらない。ぱっと見ださいくらいがいい」という。
「一見ださい」を取り入れる男性が増えているのはなぜか。ファッションジャーナリストの宮田理江さんは「若い人を中心に、きっちり決めすぎるのはやぼという風潮がある。敬遠する人が多かったおじさん系アイテムは、ほのぼの感を演出できるので『はずし』になる」と話す。パルコのウェブマガジン「アクロス」の高野公三子編集長も「決め決めに頑張るほうがださいという感覚。少しずらすことでチャーミングなイメージを作っている」とみる。
現在米国でも「ノームコア(normcore)」(normalとhardcoreの造語)と呼ばれる、一見ださいような「筋金入りの普通」ファッションが、話題になっている。この春は街中に"ださいけどおしゃれ"な男性が増えそうだ。(井土聡子)
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