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クリーブランド美術館展 西洋式リアリズム探究した渡辺崋山の衝撃

2014/2/5

縦が2メートルを超える画面のほぼいっぱいに、帯刀した人物の全身像が描かれている渡辺崋山の「大空武左衛門像」(1827年)。東京・上野の東京国立博物館平成館で開催中の「クリーブランド美術館展 名画でたどる日本の美」を訪れ、この大作の迫力に軽い衝撃を受けた。展示ケースの底面が床より数十センチ高いこともあり、作品の前に立つと、でかでかとした足の描写が自然に目に飛び込んでくる。ぞうりを履いた素足は並の人間のものとは思えず、すごみすら見せていた。

渡辺崋山と聞いてすぐに思い浮かぶのは、展覧会を企画した東京国立博物館が所蔵する国宝の「鷹見泉石像」(1837年)だろう。西洋絵画的な陰影を施したリアルな顔の描写が印象的な作品だ。リアリズムを意識しながら改めて「大空武左衛門像」を眺めると、こんな想像が脳裏をかすめた。「江戸時代に2メートルを超える人物像。これは、リアリズムの作品というよりも、誇張して描かれたに違いない」。

ところが、展覧会カタログに掲載された同館の松嶋雅人研究員の解説によると、この絵に関しては、「等身大」で描かれたことを記した文献が残っているという。その文献とは、「南総里見八犬伝」などの著者として知られる曲亭馬琴の日記だった。「一毫も差錯あることなし」(ごくわずかの違いもない)と記されていたというから、等身大であることをさぞかし強調したかったのだろう。大空武左衛門は熊本藩お抱えの力士だった。巨漢の力士を考えれば違和感はなくなる。

崋山は、「写真鏡」と呼ばれるピンホールカメラのような光学装置ですりガラスに映る画像をなぞり写したという。「写真鏡を使って正確に描きとった武左衛門の像を、小さなマス目で区切って部分ごとに拡大して描くことで等身大に仕上げたようです」と松嶋研究員は話す。蘭学にも造詣が深かった崋山のリアリティーへの探究心と実作での再現に対する執着の深さが分かる。この作品の来日は、崋山のリアリズムを検証するいい機会でもある。同館には、本館でもよいので「鷹見泉石像」を展示して、来場者が両者を比べられるようにしてくれればありがたいと切に思った。

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