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「進撃の巨人」制作者が語る 日本アニメ成功の道筋 WIT STUDIO・和田丈嗣社長インタビュー

2014/1/29

 今、海外で最も勢いある日本のアニメが「進撃の巨人」だ。昨年、国内で放送が始まったテレビシリーズは既に30近くの国・地域で放送・配信され、どんどんファンを増やしている。原作漫画(講談社刊)にほれ込み、アニメ化を手掛けたのは新進の制作会社「WIT STUDIO」の和田丈嗣社長(35)だ。近年、韓国や東南アジアなどに押され気味といわれてきた日本のアニメに、むしろ強い将来性を感じているという。

■誰もが自分にひき付けて考えられる物語

――原作のどこが気に入ったのか。

 和田丈嗣(わだ・じょうじ)1978年生まれ。慶応大卒。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」などで知られるアニメーション制作会社「プロダクション・アイジー」から独立し、2012年に「WIT STUDIO」を設立。「進撃の巨人」以外の作品に、昨年公開されたアニメ映画「ハル」など。

 人類が壁に囲まれて暮らしている。そのことに疑問を持った主人公が、外の世界を見ようとしたら巨人に襲われる、という物語は、日本のあらゆる世代に加え、海外の人々にも通じると思った。それまで大学という壁の中で守られていたのに、卒業と同時に終身雇用が終わった実力社会に放り出される日本の若者とか。競争の激しいグローバル社会で食うか食われるかの戦いを強いられる欧米のビジネスマンとか。誰もが自分に引き付けてとらえることのできる物語だ。個人的には、前の制作会社から独立して、外の世界に出たばかりの自分たちの境遇と、物語がまっすぐつながっているように感じた。

――映像表現で挑戦した点は。

 ここ数年のアニメ界は、フルCGが可能な時代に何をなすべきかという課題を突きつけられていた。今回の作品で1つの答えが出せたと思う。「進撃の巨人」の映像の特徴は、立体機動装置(巨人と戦う少年たちが身につける装置)を付けた少年たちが、次々と街や森の中を飛び回るスピードの表現だ。これを実現する上で重要な役割を果たしたのが、キャラクターを鉛筆や紙を使わずタブレット端末で描くデジタル作画だった。すべてをデジタルで行うことによって作業効率を上げることができ、(動画を描く)アニメーターと(CGによる処理を担当する)CGチームとの連携が新しい映像表現を生み出した。アニメにおけるCGの活用という点で、1つの頂点に達したと思う。

 「進撃の巨人」とは 天敵である「巨人」から逃れるため、人類は高い壁を築き、その中で暮らすようになった。それから100年。平和に慣れ、過去の恐怖を知らない子供たちが壁の外を夢見るようになったとき、壁を超える大きさの巨人が人類に襲いかかる。主人公の少年エレンは母を捕食されたことを機に、幼なじみの少女ミカサと共に、立体機動装置を使った対巨人戦闘術を学び、兵士となる。「壁」や「巨人」は何の象徴か、人類は結局、何と戦っているのか。さまざまな解釈を呼ぶ物語が大きな魅力になっている。
 原作漫画は2009年秋から「別冊少年マガジン」で連載中で、国内での単行本の発行部数は累計3000万部。アニメは昨年4月に東京などで放送が開始され、秋に終了したが、現在は岩手県、山梨県、鹿児島県、愛媛県などで放送中だ。順次リリースされているDVDは、昨夏発売された1巻目だけで10万本を超えた。今年は実写版の映画の撮影も始まる予定だ。
 海外では原作漫画の単行本は8言語に翻訳され、10カ国以上で発売された。北米(66万部)や韓国(53万部)、台湾(42万部)では特にヒットしている。テレビアニメは欧米やアジア、北アフリカ、オーストラリアなど30近くの国・地域で放送・配信され、今後も放映エリアは増える予定だ。

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