「目玉」ファッション、神秘的でグロかわいい
個性派女性、服やアクセサリーに取り入れる
「ちょっと勇気がいるけど、着けてみると目立ってカワイイ」。東京都武蔵村山市の大学生、岩下唯さん(19)は東京・原宿の雑貨店で目玉の飾りが付いたヘアアクセサリーを手に取った。大阪市から来た会社員、村田陽子さん(25)も「個性的でアクセントにぴったり」とヘッド部分が目玉になっている指輪を購入していた。
パンクファッションブランド「HELLCATPUNKS(ヘルキャットパンクス)」では、目玉を使った輸入アクセサリーを多く扱う。ラフォーレ原宿店の売れ筋はヘアゴム(1900~2100円)やヘアクリップ(1900円~)で、1日に20個以上売れていく。指輪やチョーカーも人気だ。中学生から主婦まで、幅広い年代の女性が買っていくという。
店長の田村裕美さんによると、もともと目玉グッズは音楽のジャンル「サイコビリー」のファンが愛用していた。サイコビリーはロカビリーから派生しパンクロックの影響を受けた音楽で、ホラーメークを施した演奏者が多い。以前は購入者も年長者が多く「白目部分の血管が怖い印象を与え、とても一般受けしなかった」(田村店長)。
しかし2011年ごろに歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんが眼球グッズを衣装に取り入れてから、サイコビリーとは無縁の若年層の女子にも人気が出始めた。昨秋ごろからは店頭に出すとすぐ売り切れる状態という。
田村店長は「最近はグロいのにかわいい『グロかわいい』という定義が身近なオシャレとして定着してきた」とみる。
ファッションブランド「KENZO」も13年秋冬のレディースコレクションのテーマに目玉を採用。「EYE(瞳)」コレクションとして、ワンピースやタイツを展開している。
日本でのPRを担当するヒラオインク(東京・渋谷)の石崎絵麻副社長は「13年のパリコレでは会場にどよめきが走るほどインパクトがあった」と話す。
店頭での発売後も順調に売れ、在庫があまり残っていないほどだ。瞳を全体にちりばめたスエット(3万円前後)は20代、コート(20万円前後)は50歳代の購入が多いという。
真ん中に大きな瞳が一つ描かれたスエット(6万9000円)を愛用する千葉県市川市の会社員女性(28)は「シュールさがいい」。漫画家・水木しげる氏が生み出した妖怪キャラクターに例えて、「オシャレな目玉おやじみたいでしょ、と友達に自慢している」と笑う。
KENZOでは、1980年代のバブル全盛期に流行したロゴマークやアイコンを大きくあしらったデザインの人気が復活基調にあると分析。EYEコレクションは古代神話に出てくる守護神の瞳をイメージし、ロゴマークのようにデザインした。今後もアレンジを加えながらシリーズ展開を継続していくという。
目玉は古代エジプト神話の「ホルスの目」など古くから様々な象徴として用いられてきた。目玉ファッションを身に着ける女性たちは、無意識のうちにその神秘性にひかれているのかもしれない。
(中藤玲)
〔日経MJ2014年1月24日付〕
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