みんなが「スーパーウーマンタイプ」の女性にはなれない

これまでの日本人の働き方は非常に画一的なものでした。新卒採用で一斉に大量に採用されて、年次によって昇進・昇格のタイミングがほぼ決まっていて給与も横並び。こうした既存のキャリアモデルに女性の働き方を組み込もうとしている現状がありますが、育児・介護と両立しながら各人の力を生かすことを考えるとそもそもキャリアモデル自体が多様化するべきです。

一定の入社年数までに指定されたグレードに達していないと管理職になれないという会社もありますが、もっと柔軟な運用方法を考えるべきだと思います。そうしたら、子育てを終えてから通常よりも遅いペースで管理職を目指すこともできます。もちろん、通常よりも短期間で管理職に到達できるコースがあってもいいでしょう。

また、管理職を目指すコースもあれば、後進の教育をしつつも専門領域に特化してキャリアを積むコースもあるなど、女性が目指すべき目標を複数用意することもポイントでしょう。

会社がロールモデルを女性社員に提示するとき、ともすると「スーパーウーマンタイプ」の女性を押し出してしまいがちです。非常に有能で勤勉で、長時間労働をいとわず男性以上に猛烈に働き、育児と仕事を難なく両立している…そんなタイプの女性のことです。そうした女性は素晴らしいのですが、すべての女性が「スーパーウーマン」にはなれません。

育児や介護による時間的制約の中で仕事との両立をしてきた女性の話こそ、多くの女性たちに共有されるべきですし、彼女たちが何によってモチベーションを高めてきたのかは、女性活用の観点から非常に重要なポイントになります。

多様なキャリアモデルを可能にすることで、社員一人一人が辞めずに働き続けられる組織体制を作る必要があります。

実際、私自身も会社側の理解があったからこそ、ここまで働き続けることができました。大学卒業後に入社した際は一般職で、翌年、総合職に転換しました。家庭の事情で、退職を申し出たときもあります。その際は上司が慰留してくれ、会社側から遠隔地で嘱託社員として働くことを提案してくれました。その後、再びフルタイムの正社員になり、今に至ります。しかし、私よりもはるかに優秀な社員が育児や介護を理由に辞めざるをえないケースも多々ありました。会社側が柔軟な働き方を実現することで開けるチャンスには見過ごせないものがあります。

これまで会社や周囲にたくさん助けられながら働き続けてきたので、今度は私自身が女性たちが働き続けることをサポートしたいと思っています。この記事を読んでいる女性たちの中にも、部下や後輩を指導する立場の方たちも多いのではないでしょうか。

管理職として多様な働き方を実現するのは決して簡単なことではありませんが、ちょっとした配慮やサポートがどれほど女性の人生を変えるか……ぜひ考えてみていただきたいと思います。とてもやりがいのある仕事だと思いませんか？

育児休業から復帰した後1年くらいは、子どもが体調を崩しやすく、頻繁に仕事を休まざるをえない女性が少なくありません。上司は往々にして「この調子で休み続けられたら仕事にならない」などと思ってしまいます。女性のほうも「こんなに迷惑をかけるなら、いっそのこと辞めたほうがいいのではないか」と考えてしまいがちです。しかしながら、実際はこのように頻繁に仕事を休むのはせいぜい1年程度のことです。多くの場合、ずっと続くわけではありません。ですから、管理職の人たちは「これは今だけのこと。あなたのことをみんなで支えるから頑張りなさい」とぜひ背中を押してください。きっと部下の女性はそのことを一生忘れないでしょう。そのことが組織の成長を支える貴重な労働力を確保することにつながるのです。

この人にお話を聞きました

（ライター　田中美和）

［nikkei WOMAN Online2013年12月24日付記事を基に再構成］