輝く「リケジョ」 ものづくりに生かす好奇心と個性
少子高齢化が進むなか日本のものづくりの担い手として期待が集まる理系女子(リケジョ)。理系男子に比べると比率は少ないが、その数は着実に増加、企業や社会での活躍の場も広がりつつある。その一方で、出産や育児でいまだにキャリアが変化を受けやすいのも事実だ。学生や研究者、経営幹部など各分野で輝くリケジョの今を紹介する。
大学生の10人に1人
今、大学生(学部)の10人に1人は実はリケジョだ。その数は年々、増え続けている。
取材したリケジョたちはそれぞれに個性的だったが共通していたのは好奇心が旺盛なこと。しかも、自分の人生に自信を持ち、目の前の課題に全力投球して道を切り開く意思が強い。勉強や仕事、趣味にも一生懸命。決して手抜きをしない女性たちだった。
日本女子大学の目白キャンパス(東京・文京)にある数物科学科の研究室。放射光を使う計測機器など様々な装置が並ぶ殺風景な部屋の中で、ホワイトボードのウサギの落書きだけ、かわいらしかった。
研究室では学部4年生のリケジョ4人が卒業研究の真っ最中。取材に応じてくれたのは二藤奈帆さん(22)、山原千沙さん(22)、奥田眞理亜さん(23)、鈴木虹架さん(22)の4人。みんな「数学や物理に興味があって、好きなことを勉強したかった」。ちなみに卒業研究では空気が光の伝わり方に及ぼす影響など、非常に小さな物理現象の測定方法を研究している。11月の中間発表に向け明け方まで実験を続ける日もある。
それでも週末はみんなで旅行に行くこともしばしば。研究もレジャーも手抜きしないのがリケジョ流か。指導する宮原恒●(日の下に立)特任教授は「本当はもっと研究してほしいんだけどね」と苦笑する。
将来より今に全力
文部科学省の学校基本調査によると、日本の大学(学部)の学生数は256万人(5月時点)。このうち理・工・農・保健の4学科のいずれかを専攻する女性は27万人で10.7%を占める。10年前に比べ8万人増え比率も3ポイント上がった。男性に比べると少ないが、リケジョは着実に増えている。
日清製粉でコンビニのお弁当などの研究開発を担当する社会人1年目の大久保佳奈さん(25)。就職前は大学院で新しい半導体の合成を研究した。まったく違う分野に見えるが「身の回りで使われているのを見つけると、"この中にも私の仕事が"とうれしい」のが共通点。
理系で培った技術や知識は1~2年では無くならない。今は面白いことができているから、それで十分。将来にはあまり不安を感じないという。「好きなことを選んで進路を決めてきたからリケジョなんだ」と、興味や関心に一直線で仕事を楽しんでいる。
学校基本調査によると今年3月に大学(学部)を卒業し就職したリケジョは約3万8000人。このうち約2万5000人は医学や看護などの学科卒で、多くが医師や看護師などになる。残りの1万3000人のうち、工学科卒は建築や情報関連の専門職、農学科卒は販売職、理学科卒は事務職に就く人が目立つ。農学や理学では大学の専攻が就職先と直接関係ない場合も多い。
お茶の水女子大学大学院で宇宙物理学を専攻する博士3年の野村真理子さん(25)。スーパーコンピューターを使い、ブラックホールの周辺でガスが噴出する仕組みを研究する。子供時代は天文図鑑が愛読書だったほどで今が楽しくて仕方がない。
それでも「将来は企業に就職するほうがいいのかも」と考えることがある。博士課程を無事に終えても終身雇用の助教以上のポストは競争率が高く、30代半ばまでは任期付きのポストドクターとして論文の執筆を続けるのが主流だ。生計が不安定な時期に出産を迎えた場合、どうなるんだろう――。そんな悩みを振り払うかのように、目の前の研究に専念する。
男女共同参画白書によると、日本国内の研究者に占める女性の比率は約14%。年々比率は少しずつ高まっているが、欧米諸国の大半が30%を超えるのに比べ水準は低い。日本は欧米に比べ、家庭と仕事を両立したり育児期間後に復帰しやすくしたりする支援が遅れているのが要因と言える。
[日経産業新聞2013年10月24日付]
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