「企画コーナーが少ない印象ですね」。杉原館長に話しかけると、「うーん、確かに」。重ねて理由を尋ねると、「司書の業務が増えたことがあります」。
増える仕事、変わらぬ司書の人数
武雄市図書館の司書は計13人。改修前と人数は変わらないが、貸し出しだけでなく販売の業務が加わった。「利用者からすれば、貸し出しと販売の区別なんてない。司書だから販売には関わらないなんて言い訳はきかない」(杉原館長)。さらに年中無休、閉館時間も午後6時から同9時に延びた。
調べものの相談にのるレファレンスサービスも、利用者の急増に比例して業務が増えている。すべての相談事例を記録にとって保存するなど、同館にとってレファレンスは改修前から重視してきた業務。「おろそかにすることは存在意義を自己否定するようなもの」(同)という。文化の拠点施設として、業務の効率化とサービスの維持向上をどう両立させるか。大きな課題が顔をのぞかせる。
また「静かな環境で読書や調べ物に没頭したい」という、従来の利用者の願いにどう応えるのかという問題もある。現在はカフェスペースのある閲覧室と区別して、1階奥や2階の閲覧室が静かに読書、勉強に打ち込むスペースになっているが、このまま来館者が増えていけば「音」によるトラブルが発生するケースも想定される。
本を仲介役にして、様々な人が集う場に変貌を遂げる武雄市図書館。訪れる人の目的が多様になるにつれ、共存のための「交通整理」が必要になるだろう。(文化部 郷原信之)