子どもを連れて来やすくなった
通常、図書館での私語や騒音はご法度と考えられている。だが、ここでは、この「ざわざわした雰囲気」が、大きな長所にもなっている。「子どもを連れて来やすくなった。絵本の読み聞かせもリラックスしてできる」。市内在住の30代女性が笑顔で語る。
改修前から在職する杉原館長が話す。「館が新しくなって、今まで以上にいろんな人がそれぞれの居場所を求めてやってくるようになった」。図書館の存在意義は、本の貸し借りや読書、調べもののためだけではない。人が集まって情報を交換し、自ら新しい情報を創造するような場所としても機能し始めている。カフェスペースはその象徴だ。
半年の来館者、前年比3.6倍の52万人に
4月の再開業から9月末までの半年で、来館者は前年同期の3.6倍にあたる52万人に達した。図書館を人が集まる場所にする。この点について、武雄市図書館は1つのモデルを示したといえる。
こうした新しい形の図書館について、他の地域の人も関心を寄せているようだ。日本経済新聞社が全国の成人男女を対象に実施した「図書館利用調査」(この記事最後の調査結果参照)でも77.9パーセントが「武雄市図書館に興味がある」と答えた。
もちろん、改善すべき点は多々ある。販売書籍の売り場と蔵書の棚を巡って最初に気づいたのは、他の意欲的な公立図書館に比べて司書職員オリジナルの企画コーナーが目立たないことだった。
公立図書館を訪れる楽しみの一つに、各図書館ならではの特設棚がある。地域の歴史的人物に関連する書籍を集めたり、東京オリンピック開催決定など時事的な話題を深掘りする参考図書を集めたり。記者が以前住んでいた福岡市の図書館には、ページが破り取られたり落書きされたりして戻ってきた図書をあえて実物展示するコーナーがあって、ちょっと視点を変えた棚作りにうならされたものだった。