スタバ併設、私語OK 「市立TSUTAYA図書館」の集客力佐賀・武雄市、開業から半年

2013/10/5

クローズアップ

民間企業のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営を受託し、4月にリニューアルオープンした武雄市図書館(佐賀県武雄市)。TSUTAYAの書店やDVDレンタル店、コーヒーチェーンのスターバックスを併設し、館内はコーヒーを片手に読書やおしゃべりに興じる人でにぎわう。賛否両論うずまきつつも、いまや全国から注目を集める話題の施設。その実情と人気の理由を探ってみた。(最後に、全国を対象にした「図書館利用者調査」の結果も掲載)

平日も駐車場は満杯、4割は市外から

武雄市は古くから温泉街として栄え、国指定の重要文化財「武雄温泉楼門」などが残る観光地だ。目指す武雄市図書館は町の中心部、JR武雄温泉駅から南に徒歩約15分の距離にある。

入館すると、2階天井まで届く書棚に圧倒される(佐賀県武雄市の武雄市図書館)
館内にスターバックスが入居する(佐賀県武雄市の武雄市図書館)

足を運んで驚いた。8月末の平日昼下がり。午後の日差しがいちばん厳しい時間帯にもかかわらず、図書館の駐車場はほぼ満杯だ。それも地元の佐賀ナンバーだけでなく、福岡や長崎の車がひっきりなしに出入りする。「利用者の4割は市外からですよ」。杉原豊秋館長が教えてくれた。新しい観光名所が生まれたようなものだ。

販売書籍の棚は白の表示、貸し出しの棚は黒の表示で区別(佐賀県武雄市の武雄市図書館)

館内に入ると、目の前一面に本でできた壁が広がった。吹き抜けの2階天井に至るまで書棚が伸び、本がぎっしり詰まっている。1階手前は新刊本や雑誌を販売するTSUTAYAの書店コーナー。奥には高さ4メートルほどある書棚がずらりとならび、入り組んだ迷路のようになっている。

話し声が聞こえる空間、パソコン利用もOK

20万冊の蔵書の大部分が開架で利用でき、さらに3万冊の販売用書籍が並ぶ。単に便利だというだけでなく、まるで本の森の中を歩いているような爽快な気分になる。次に読む本を探しているのだろうか。学校帰りの高校生が小説の書棚を前にして、じっとたたずんでいた。

600種類をそろえる雑誌販売コーナーから好きな雑誌を選び、飲食しながら読める(佐賀県武雄市の武雄市図書館)

だが、なにより他の公立図書館と異なるのは「音」だ。メーンの閲覧スペースにカフェが併設されているので、館の入り口をくぐった瞬間、話し声がざわざわと耳に入ってくる。一般的な図書館を支配する、あの水を打ったような静けさはない。

カフェスペースではコーヒーや軽食を片手に貸し出し図書をめくることができる。販売用の書籍や雑誌の持ち込みもOK。ノートパソコンを開いて仕事の資料作りに没頭したり、友人とのおしゃべりに興じたり。極端なことをいえば、周囲の迷惑にならない限り、本と全く関わりのない過ごし方をしてもかまわない。

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