スマホをマイ雑誌に 広がる記事自動収集サービス
インターネットには色々なニュースがあるけれども、読みたい記事を探すのに一苦労――。そんな悩みを解決する「キュレーション」と呼ばれるサービスが広がっている。語源を一にする「学芸員(キュレーター)」のように、多様なウェブサイトから好みの記事を自動収集してくれ、スマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)でまとめて閲覧できる。常に最新で、オリジナルの雑誌を持ち歩く感覚が楽しめる。
「自分が知らなかったニュースとの出合いが楽しみです」と話すのは都内の大学に通う佐藤桃子さん(21)。佐藤さんはグライダーアソシエイツ(東京・港、杉本哲哉社長)が提供するキュレーションサービス「Antenna(アンテナ)」を利用して3カ月になる。就寝前や通学中など「1日30分以上は使っている」(佐藤さん)。
■常に最新の情報配信
アンテナは100を超えるニュースサイトの記事を再配信し、スマホやタブレット、パソコンで閲覧できる。あらかじめ興味があるサイトを選んでおくと、各サイトで新しい記事が配信されるたびにアンテナ上でも自動的に情報が更新されていく仕組み。
例えばファッションと新商品の記事が読みたければ講談社の「i-VoCE」と日経BP社の「日経トレンディネット」にチェックを入れ、1つの画面で読むといった具合だ。
興味の幅を狭めないために、たくさんのサイトを選ぶという使い方もある。佐藤さんはファッションなど必ず読みたい記事に加えて、食品や自動車など様々な分野を選択。最近はイチゴの美容効果の記事が記憶に残ったといい「世界が広がる」(佐藤さん)のを実感している。
米国発の「フリップボード」も人気のキュレーションサービスだ。約40の媒体を選ぶことができ、スマホやタブレットから利用できる。画面をなぞるとページがめくれる、雑誌風の操作性が特徴だ。3月には大幅に改変し、利用者が記事をテーマ別に集めてオリジナルの電子雑誌を作れる機能を追加した。
例えば「今春発売の車」というテーマで複数の媒体が配信するニュースを保存していけば、車という興味に沿って様々な視点の記事を読むことができる。行ってみたい温泉の記事を見つけたら「旅行」に、格好いいスーツの記事なら「ファッション」に、と"マイ雑誌"へ追加すればコンテンツが増えていく。タイトルや目次など紙の雑誌風の表紙が自動で作成される。
作成した雑誌は交流サイト(SNS)の「フェイスブック」やミニブログの「ツイッター」などを通じて知人らに公開することもできる。趣味を通じた交流の輪も広がりそうだ。
■SNSで友人と共有
韓国発の「ziny.us(ジーニアス)」は今年2月にサービスを始めたばかりのタブレット向けのサービスだ。人工知能の技術を活用して閲覧履歴などから各ユーザーの興味や関心を学習。ユーザーが自分で選んだ媒体だけでなく、お薦めのコンテンツを自動で選んで、表示してくれる。
「フリップボード」のように気に入った記事だけ集めて1冊にまとめて表示できるマイ雑誌の機能もあり、手元にある写真や動画をアップロードして雑誌風に編集することもできる。
すでに利用している「フェイスブック」や「ツイッター」のアカウントを登録すれば友人らの投稿を雑誌にまとめてくれるなど、個人の趣味嗜好をより重視した作りになっている。
キュレーションサービスはスマホでも使いやすいように工夫されているが、雑誌の感覚を楽しむには一度により多くの情報を表示できるタブレットの方が相性が良い。アンテナユーザーの佐藤さんも米アップルの「iPad(アイパッド)」を購入したのが利用のきっかけだ。
電子書籍やゲームなどタブレットで楽しめるコンテンツは様々。そこに「自分だけの雑誌」を加えてみるのも良いだろう。
(産業部 秦野貫)
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