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餅は速く激しくつけ 仕上げは1秒2回 餅店経営 中谷充男

2012/6/27

子供の頃、年末年始のテレビ番組などで日本各地の餅つきの様子を見るたびに思ったものだ。ぺったん、ぺったん。どうしてこんなにものんびり杵(きね)を振るうのだろう。餅つきとはもっと激しく、高速であるはずだ。世の中にはずいぶんと変わった餅つきがあるものだなあ、と。

(高速餅つきの映像は、パソコンで右下の写真をクリックするとご覧になれます)

■奈良・上北山村の伝統

奈良市の餅店「中谷堂」での餅つき。
最後の30秒ほどは1秒2回のペースでつく。手返しも高速で

奈良市の餅店「中谷堂」での餅つき。最後の30秒ほどは1秒2回のペースでつく。手返しも高速で

私が生まれ育ったのは奈良県南部の上北山村。一部の地区では本当に高速で餅をつく。つき始めからどんどんテンポを上げていき、最も速いときで1秒に2回は杵でつく。つくたびにちゃんと手返しもする。

それが当たり前と思っていた。しかし高校生の頃、村のお祭りでそんな激しい餅つきを目にした観光客たちの非常に驚いた様子から、どうやら全国的には上北山村の餅つきの方が極めて特殊であると初めて知った。

大学を卒業し、しばらくは父の建設会社で働いていたが、私も一から事業を起こそうと考えた。どんな商売を始めようか。思い浮かんだのが、故郷の餅つきだった。高速でつくほど餅はおいしくなる。きっと多くの人に喜ばれるはずだ。1992年、奈良市の商店街で餅店「中谷堂」を開いた。

最初から故郷のつき方でついた。道路に面した店内でつくのだが、毎日、ガラス越しにそれを見る人たちで店先がごった返すようになった。

なぜ高速でつくのか。蒸したての餅米を熱いうちにつくことで、やわらかくてコシのある餅に仕上がるためだ。餅米の温度が低くなるとデンプンの成分が絡みにくくなり、切れやすく伸びにくい餅になる。当然、食べてもおいしくない。

上北山村は山奥で冬はとても寒い。餅米が冷えないうちに急いで餅を仕上げようとするあまり、こうしたつき方が定着したのではないだろうか。

■今までけがなく

臼でつくのは2、3分くらいで、うち最高速の1秒2回のペースは最後の30秒ほどだ。息の合ったつき手と返し手でないと、良いお餅にはならないし、何といっても危険極まりない。タイミングが合わないと杵で手を直撃だ。手返しするのは専ら私の役目。他の若い従業員ではなかなかうまくいかない。

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