昔ここは池だった…古地図アプリで楽しむ歴史散策
スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)やタブレット端末を使って、街並みの変遷をたどることができるアプリケーションが注目を集めている。全地球測位システム(GPS)とスマホの地図サービスとを連動させ、歴史散策のイベントなどで活用する例も出てきた。普段何気なく歩いているだけでは気付かない新しい発見があり、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層で受け入れられているようだ。
「みんなは今、明治時代まで大きな池があった場所の上を歩いているんだよ」。11月下旬、小学生を対象に東京タワー(東京・港)周辺で行われた歴史散策のイベントで、非営利組織(NPO)江戸前21の清田和美さん(63)が、タブレット端末を片手に子どもたちに話しかける。清田さんが説明に使っているのがアプリ「今昔散歩」だ。
20万件の利用
今昔散歩では東京23区の現在の地図と、江戸・明治時代の古地図を対比して同時に見ることができる。GPSを利用して現在地が昔はどんな場所だったかが一目で分かる仕組みだ。約500カ所の歴史的な出来事に関連した場所については、詳細な解説をポイント表示するため、歴史学習としても活用できる。
親子でイベントに参加した東京都目黒区の本多如大さん(39)は「普段からよく通る道だけど、昔の街の様子は知らなかった」とし、子どもの叶武くん(6)は「今日習ったことを学校で友達に教えてあげたい」と笑顔で話した。
今昔散歩は5月に米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」向けに始め、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載する、NTTドコモの多機能携帯端末(タブレット)と、一部スマホにも無料で提供する。
開発したビーマップ(東京・文京)によれば、アプリは予想以上の人気で、年明けにはダウンロード数が20万件を突破する勢いだという。「歴史ファンの潜在的な需要には驚かされた」(杉野文則取締役会長)。オススメはバスやタクシーなどの乗り物に乗りながら使ってみることだ。「都内の大通りの多くは、昔の川や水路を埋め立てて造られたことを知ることができる」(杉野さん)と話す。
歴史散策にアプリを活用する取り組みは各地に広がっている。ATR-Promotions(京都府精華町)はアプリ「ちずぶらり」シリーズを手掛ける。ちずぶらりでは現在の地図を、過去の街並みを描いた鳥瞰(ちょうかん)図や屏風絵など様々な種類の古地図と対比できるのが特徴だ。iPhoneと多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」で利用できる。昨年4月に第1弾のアプリの配信を始めて以来、これまでに20種類のアプリが開発された。有料版と無料版合計で数十万件ダウンロードされた。
観光振興に一役
11月上旬、アプリシリーズのひとつ「高遠ぶらり」を利用したイベントが長野県伊那市で開催された。県の内外から約140人が参加して街の観光スポットをスマホやタブレット端末を片手に巡った。これまでにタブレット端末に触れたことのないお年寄りからは「こんな便利なものができたのか」との驚きの声が聞かれ、子どもたちはゲーム感覚で楽しんでいた。同社の高橋真知ミュージアムメディア事業部長は「地域活性や観光に役だってくれれば」と期待する。
日本各地のお城探検に使えるアプリ「城めぐり」もオススメだ。日本全国約170の様々なお城を紹介する。城内のやぐらや門といった各施設の解説を読めるほか、現在の地図の上に、過去のお城の区画図も表示する。堀の跡など城の遺構を探し出せるので"歴史好き"に好評という。特定の場所を訪れた記録をつける「チェックイン」機能を利用して、お城を訪れた日付入りの特製画像もダウンロードできる。
いつもの見慣れた風景の中にも、これらのアプリを利用すれば何か新たな発見があるかもしれない。さあ、スマホを片手に街に飛び出してみよう。
(産業部 古川慶一)
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