17年ぶり日本人審査員 河瀬直美「世界わかりあう場に」カンヌ映画祭リポート2013(2)

日本人として17年ぶりの審査員である。河瀬直美監督は15日、白いドレスで記者会見場に登場。スティーブン・スピルバーグ審査委員長の隣に座り、こう語った。

「人間を取り巻く世界の困難はますます極まっている。困難を乗り越えるべく、争うのではなく、映画という芸術を通してわかりあう。そういう場をカンヌは与えているし、世界に新しい指針を示し得る場所だ。2年前の日本の震災の時もカンヌは応援のメッセージを投げてくれた。世界にすばらしいメッセージが届くように、私たちが何を選ぶかは重要なことになると思う」

河瀬はカンヌにめでられた監督だ。97年に「萌の朱雀」でカメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞。2007年には「殯(もがり)の森」で最高賞に次ぐグランプリを獲得した。

そんなふうに若くしてカンヌに才能を見いだされ、カンヌで名声を得ていった監督は少なくない。「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオンしかり。「少年は残酷な弓を射る」のリン・ラムジーしかり。今年はカンピオンが短編コンペの審査委員長、ラムジーは河瀬と共に長編コンペの審査員を務める。

カンヌ映画祭のジル・ジャコブ会長はセレクション発表の記者会見で「次の世代の若い映画作家を発掘し、励まし、信頼を築く。それは長い時間のかかる厳しい仕事だが、カンヌをカンヌたらしめるもので、指導者が忘れてはならない哲学だ」と強調。「種をまけばあすのフェリーニを収穫できる。あるいはベルイマンやブニュエルを、あるいはジェーン・カンピオンを」と語った。

「才能ある映画人に対しては積極的にチャンスを与え、新しい芽を育む。こうした面倒見の良さは、数ある国際映画祭の中でも抜きんでている」(河原畑寧「映画への旅」)というカンヌの伝統は今も生きている。

(カンヌ=編集委員 古賀重樹)

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