N
エンタメ!
映画セレクション

2013/5/17

映画セレクション

憧れの女性を得るため成り上がったギャツビーを、けれん味の下に繊細さが潜むディカプリオが好演。ロバート・レッドフォード主演、フランシス・F・コッポラ脚本、ジャック・クレイトン監督「華麗なるギャツビー」(74年)が心理的、精神的な描写に傾いていたのに対し、ラーマン作品はより視覚的、表層的に時代をとらえることで、そのまがまがしさをリアルに浮き彫りにする。前作にとっては50年前だが、今や90年前の話だ。記憶から歴史へ。時を経たから見えてくるものもある。

「シベリア鉄道の中で1冊の小説を読んだのがすべての始まりだ。今日の精神的風土の中で、ギャツビーの物語に触発されずにいられないし、違った見方ができるはずだ」。ラーマンは15日の記者会見でそう語った。

審査委員長、スピルバーグ監督への喝采

開会式で圧巻だったのは「ジョーズ」「E.T.」「インディ・ジョーンズ」などの名場面の上映に続いて登場した審査委員長、スティーブン・スピルバーグ監督への喝采だ。総立ちの観客の拍手は延々と続き、この現代米国を代表する大監督への深い敬意が、世界中に満ちていることを実感させた。

「カンヌは66回、私も66歳になりました」とスピルバーグはあいさつした。カンヌ映画祭ディレクターのティエリー・フレモーによると、審査委員長の内諾を得た2年前からスケジュールを空けてもらったという。

開会式に先立つ記者会見で「審査の方針は?」という質問に対しスピルバーグは「ない」と笑って答え、さらにこう続けた。「私の意見は単純だ。私たちはいつもジャッジしている。常に映画館でみる作品をジャッジし、評価し、何が革新的に新しいのか見ようとする。映画はいつも観客の目をひこうと競い合っている」

今年の米アカデミー賞(オスカー)を争ったアン・リー監督も審査員の一人だ。「ライフ・オブ・パイ」のリーは「彼は私のヒーローだ」と語り、「リンカーン」のスピルバーグも「我々は競争相手であったことは1度もない。いつもずっと仲間だった」と応じた。

アカデミー賞とカンヌ映画祭の違いについて、スピルバーグはこう語った。「我々はただ映画を見て、それについて話し合い、その結果をみなさんにお渡しする。ここにはオスカーのようなキャンペーンがなく、吸い込む空気は新鮮だ」

(カンヌ=編集委員 古賀重樹)

エンタメ!連載記事一覧