マネー研究所

わたしの投資論

波に乗れなきゃ引くのも投資(片山晃)

2014/5/22

注目するのは売上高と営業利益です。純粋に成長しているかどうかですね。PER(株価収益率)が何倍、というのはあくまで現在の話で、誰でも分かるので付加価値はありません。大事なのは、いまはこうだけど来年、再来年、3年後にはどうなるか、という点です。成長性の高さ、事業のポテンシャルから割安かどうかを判断します。決算の数字を見て、そこに書いてある以上のことを読み取るんです。

たとえば、それまで成長していなかった企業がある四半期でぴょこっと10%伸びていたら、「何が起こったんだろう」と探ります。そうすると、新しい研究開発の成果が出始めたとか、前の年に強烈なリストラをやってコストダウンした結果、利益率が改善し始めたとか、必ず理由が見つかります。それが今回限りなのか、そのまま続いていくのか、続くとすれば成長の角度がゆるやかなのか急なのか……そこが、投資家の腕が問われるところです。

そうやって「発掘」した例の一つが、ネット広告のファンコミュニケーションズです。もともとはパソコン向けのアフィリエイト広告に強く、モバイルでは後れを取っていましたが、スマートフォン(スマホ)の普及をチャンスとみていち早く動き、シェアを伸ばしました。

その前から、広告でもスマホの時代が来ると思っていました。最初はモバイルの広告に強い企業の株を買ったんですけど、それまでモバイルに強かったということは、つまりモバイルの中でもガラケー(従来型携帯電話)向けが中心なんですよね。結局、そこはスマホへの対応に遅れて株価も下がり、大損しました。ということは、これから伸びるのは、むしろこれまでモバイルで出遅れていて、これから巻き返そうとしている企業なんです。そう気づいて、ファンコミュニケーションズに目をつけました。買ったときの時価総額は100億円程度でしたが、ピークには2000億円を超えました。

■アベノミクス相場で引退決意

このやり方で、運用資産は約12億円まで増えました。ところが12年末、大きな失敗をすることになります。僕は割安な株を買うだけでなく、割高な株を空売りすることでも利益を上げてきましたが、全体の株価水準が一気に上がって、売りの方でむちゃくちゃ損しました。資産の3割が吹き飛んでしまったんです。1年間も続くような上昇トレンドはリーマン・ショック以降一度も来ていなくて、ずっと1万2000円と8000円の間を行き来するような「レンジ相場」だったんですよ。今回もそういう感じだろうと思ってレンジの上で売ったつもりが、そうじゃなかった。それがアベノミクス相場の初動でした。

失敗の原因ははっきりしています。ちょっと間違えたというレベルじゃなくて、それまでの相場に適応してもうけてきた分、大きな相場についていけなかったんです。

株価が上がれば、普通は「よし、上げ相場に乗るか」となるんでしょうが、ここで無理して波に乗ろうとしても逆に損をするだろうという自覚がありました。これだけ資産もあるし、もう十分じゃないかと思ったんです。過去にカリスマと呼ばれた個人投資家の中にも、ある時期にものすごくもうけたあと、相場の潮目が変わったのについていけずに結局全部資産を失って、いなくなってしまった人たちがたくさんいるんですよ。そういうのをリアルタイムで目撃してきているので、彼らのようにだけはなってはいけないという思いもあり、市場からの撤退を決意しました。

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