新卒採用は株式投資のようなもの松井証券社長・松井道夫氏

2012/3/15
「就職活動は典型的な『合成の誤謬』だ」

大学生の就活が真っ盛りだ。3年前に桜の下で入学式を迎え、これから始まる学生生活に胸躍らせていた学生たちが、慣れないスーツに身を包み、脚速に歩いている。実に痛ましい光景だ。学生生活で最も充実しているはずの貴重な時期を数カ月も会社訪問に費やすのは大きな社会的損失だ。いわゆる就職協定が1997年に廃止されてから、事態が悪化したように思う。

毎年数人しか採らない弊社のような小規模会社にも、1000人ものエントリーがある。就職希望大学生数が40万人とし、ひとり20~30社も応募すると、エントリーシートの総数は1000万通くらいになるのではないか。それでも1社も内定が出ない学生もいれば、10社内定を取る者もいる。長い就活期間中に重複が多く極めてアンバランスになっているのが現状だ。各社・各人のミクロでは合理的行動と思われているものが、社会全体のマクロで見ると極めて不合理となるという意味で、典型的「合成の誤謬(ごびゅう)」であると思う。貯蓄は美徳だからといって皆が貯蓄に励むと、経済全体が活力を失い急速に縮小してしまうという現象と同じだ。

採用の相場は張るべき

経営者として四半世紀、新卒の採用をしていてつくづく思う。採用は株式投資みたいなものだと。これはイケると思って採っても伸びない者がいる一方、結構リスキーだなと思いつつ、エイヤアで採ったら大きく伸びた者もいる。採用は一種の賭けだ。「相場を張らない」のが我が社の社是みたいなものであるが、こと採用に関しては相場を張るべきと思っている。それは“優秀な人”よりも“面白い人”を採るということである。

両者はなかなか一致しないが、仮に外れても自分の感性で採ったのだから納得がいく。会社は人材が全てだが、社員の平均点が高ければよいというものでもない。逸材が何人いるかがポイントだ。会社の方針は社長としての私が決めるが、それを具現化し牽引(けんいん)してくれるのはそうした社員たちだ。本来ならばエントリーした学生全員を自ら面接で決めたい。でも1000人は無理だ。私が採りたいという学生が社長面接前の段階でふるい落されるのが、何とも言えず悔しい。でも、それも一つの縁だと割り切るしかない。

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あえて就職協定の復活を提案する