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相続トラブル百科

相続で一番もめるのは遺産2000万円程度 相続トラブル百科 第1回

2012/1/17

ケース(2)
妻に先立たれた父親(82)が亡くなり、遺産として定期預金が兄弟に残された。

「今日で四十九日の法要も無事に終えたなあ」
「それはそうと親父の現預金は全部でいくら残ってたんだ? 家は借家だったから遺産といえば、銀行預金くらいしかないだろう。退職金が2500万円ほどあったはずだ。おれが相続する分がいくらあるのか、知っておきたいんだ」
「何言ってるんだ。親父は最後の1年、デイケアやら入院やらで大変だったのは知ってるだろ。医療費だけじゃなく、病院生活のこまごまとしたものや、介護や看病のための出費で、預金なんか残るはずがないだろう」
「そんなことあるわけないじゃないか。親父は年金だって受け取ってきたはずだ、残高がゼロだなんて誰が信じるか」
「ここでこんな議論しても仕方ない。後日、何にどれだけ使ったという明細を送るから、今日のところはそんな話はよせ」
「俺もきちんと対応させてもらうぞ。もらえるものはもらうつもりだ。金が無いなんて通用すると思うなよ、兄貴」

私が知る限り、これらの姉弟、兄弟は仲が悪いということもなく、時節ごとの交流もありましたが、遺産相続のトラブルが元で一時、絶縁状態になってしまいました。

こうしたケースは私のところに持ち込まれる相続トラブルのごく一部ですが、大半はこの事例のように、遺産総額は2000万円から3000万円程度で、ごくごく普通のサラリーマンや主婦などが、ある日突然、トラブルの渦中に放り込まれます。

こうした話を裏付ける公的なデータがあります。最高裁判所事務総局家庭局が出所の「遺産分割事件で扱う財産額(平成19年)の内訳について」という資料です。この統計は、1年間に裁判所に持ち込まれた相続争いが、一体いくらぐらいの価格帯の遺産で争われていたのかを裁判所がまとめたものです。算定不能・不詳のものを除いた案件のうち、相続財産額の内訳は次の通りです。

遺産分割事件で扱う財産額
(平成19年)
1000万円未満2044件29.1%
1000万円以上5000万円未満3083件44.0%
5000万円以上1億円未満1000件14.3%
1億円以上5億円未満537件7.7%
5億円以上41件0.6%

裁判所に持ち込まれた遺産分割案件のうち、実に73.1%が、5000万円以下の財産規模の相続について起きているのです。トラブルになるのは2000万~3000万円が多いという私の実感とも合っています。さらにいえば、1000万円以下、つまり数百万円という身近なレベルで争われたケースだけでも、全体の30%近くを占めているのです。

人間同士ですから、兄弟や親せきの間でも、感情のもつれが口論に発展し、本格的な、相続争いが起きるというのは分かります。しかし、その遺産の総額は5000万円以下が約4分の3をも占めているという現実は、多くの方にとって予想外ではないでしょうか。老後の暮らしのために自分の手元に残した資産が5000万円までのラインだった場合、統計上は「一番揉めそうな層」にあたってしまうのです。

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