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実は特殊な日本の相続税 理由は農家を救うため

2014/7/17

■誤解されやすい累進税率

――その話を聞くと、遺産税は理不尽に感じますが……。

とはいえ、税制だけでなく民法の相続制度まで考えると、米英は確かに遺産税の方が向いています。米英では、財産を持っている人が亡くなったら、まず相続の執行人が遺産を精算し、それから相続人に渡る仕組みだからです。これなら、財産自体に課税して執行人が相続税を納めてから、残りを分配する方がすっきりしています。

日本や仏独の民法では、亡くなった瞬間に財産も負債も相続人たちが共有する状態になります。そこで、相続人たちが受け取った財産をそれぞれ精算し、各自に税金を払ってもらう仕組みになっているのです。

――日本はどういう経緯で切り替えたのですか。

日本に相続税が導入されたのは1905(明治38)年。日露戦争の戦費調達が目的でした。遺産税を採用したのは、民法には当時、家督相続といって戸主がすべての財産を相続する仕組みがあり、遺産額がそのまま相続額だったからです。

遺産取得税への変更は、第2次大戦後の日本の税制に大きな影響を与えたシャウプ勧告を踏まえたものです。興味深いのは、米国による勧告なのに、米と同じ遺産税を変えようとしたことです。自国の税制にとらわれず、より合理的な仕組みを取り入れようとしたのでしょう。

背景には、日本の民法が仏独型だったことがあります。日本国憲法の施行に合わせて家督制度が廃止されたために、死後すぐに遺産が相続人のものになるという、遺産取得税に向く環境が整ったのです。遺産取得税は、各自が受け取った金額に対して累進税率がかかるので、1人だけが多額を相続すると税負担が重くなります。平等に分けるほど税額の合計が少なくなり、憲法がうたう個人主義にも合います。

――累進税率とは、金額が高くなるほど税率も高くなる仕組みですね。

誤解されやすいところなので少し丁寧に説明します。現在、相続税の累進税率は3億円を超えると50%ですが、これは「4億円分の遺産を相続すると相続税が2億円」という意味ではありません。そのように計算するのを「単純累進税率」といいますが、これだと税率の変わり目で急激に税額が増え、相続額が多い方が手元に残る額が少なくなるという問題が起きてしまいます。

そのため、世界のほとんどの国で「超過累進税率」という方式が採用されています。50%の税率がかかるのは3億円を超える部分だけで、それ以下については、それぞれ「1000万円超から3000万円は15%」などと決められた税率がかかります。ですから、相続税の対象となる額が3億円から3億1円に増えても、受け取れる遺産が減ることはありません。同じく累進税率がかかる所得税も、理屈は同じです。もちろん、累進税率である以上、相続額や所得額が増えるほど税の割合は高くなりますけどね。

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