企業再生ファンドに海外資金を呼び込め(安東泰志)ニューホライズン キャピタル会長兼社長

2014/7/20

カリスマの直言

「海外の投資家が日本のPEを素通りするには3つの理由がある」

場所は香港。ファンド・オブ・ファンズ(FoF)と呼ばれ、世界の年金、大学基金、個人富裕層の資金などを預かり、アジアのプライベート・エクイティ(PE=未公開株式)に投資する、とある会社のオフィスで、我々はPE投資担当部長から、機関銃のような厳しい質問を1時間半にわたって受け続けていた。

投資ポリシー、投資プロセス、投資チームの経験、何十件にものぼる過去の投資先全てについてのバリューアップ(企業価値向上)手段の詳細な説明、現在のパイプライン(投資候補先リスト)、ソーシング(案件獲得の手段)、日本経済の見通し、契約内容の詳細……。言語はもちろん英語であり、こうした質問に淀みなく答えなければならない。まさに丁々発止のやり取りが続き、疲労がピークに達した頃、ようやく「継続検討しましょう」という言葉が出てきた。ただし、こうした面談の後には「我々は日本のPEへの投資は限定的だから慎重に考えざるを得ない」という言葉が続くのが常だ。香港にはそうしたFoFが二十数社存在し、それ以外にも欧米の年金基金の出先などがあるので、滞在中は、そうした面談が何度も繰り返され、ぐったりした身体に鞭打って帰国便に飛び乗ることになる。

これが日本の独立系PEが海外投資家と戦う最前線の姿だ。1つの海外投資家から10億円程度の資金を得るにも、5年や6年通い続け、こうしたやり取りを繰り返さなければならないのが現実なのだ。

前回、6月22日付「独立系企業再生ファンドを育成せよ」で説明したように、企業再生ファンドは、広義にはPEと呼ばれる。だから我々も同じ苦労を味わってきた。では、なぜ、海外投資家にとって「日本のPEへの投資は限定的」なのか。FoF在籍の親しい担当者たちに、プライベートな会話の中で本音の理由を聞くと、次のような答えが返ってくる。

なぜ海外投資家は日本のPEを素通りするのか

第一に、そのPEの運営者が、投資家に理解されやすく有利なはずの日本の国内市場で相応の投資資金を獲得していないとすれば、海外の自分たちが率先して投資する理由がない。

第二に、彼らが見ているのはアジア全域であるが、この10年の経済成長率やPEの実績から見て、彼らのお客様である海外投資家は、中国やインドのPEへの投資を優先して考えていて、わざわざ日本のPEに投資するにはそれなりの理由が必要だ。

第三に、日本では企業側がPEのことを知らず、出資を好まない風潮があるのではないか。

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変わり始めた日本のPEへの認識