2012/5/10

カリスマの直言

一物万価時代の到来

従来はコスト競争力があって、初めて価格競争力が備わるというのが常識だった。コストは価格の下部構造だった。第三次産業革命は、こうした図式を根底から覆す。消費者の感性で価格が決まり、コストはそれにふさわしい形で自由自在に構成される。製造コストは価格の重要要素ではなくなりつつある。いわば「一物万価時代」の到来だ。製造業よりもサービス産業ならイメージしやすい。人間の感性という要素が入り込む余地が大きいからだ。その意味で、第三次産業革命は製造業のサービス産業化と言い換えてもよい。

規制緩和が進んでいない農業や医療の分野でも、いずれ消費者に価格の選択権が移っていくだろう。その際、価格は安ければよいというものでもない。消費者一人ひとりの要求するレベルで、千差万別の価格が生まれてくるだろう。医療でいえば、世界的権威の医師と、インターンを終えたばかりの医師とで、その分野での技術が同じ価値だとは誰も思っていない。

「山崩れが起こってから対策を練っても後の祭り」

適者生存の法則

山崩れ(革命)を予期している人は準備をするが、予期していないか、現状を最も快適に思っている人は準備をしない。山崩れは、ほんの些細(ささい)なことで一気に起こる。起きてから対策を練っても後の祭り。ダーウィンの進化論にも通ずるものがあるが、「適者生存」法則が残酷に働く時代が到来した。政治・経済で危惧すべき問題は山積だが、そんなことより、人の価値観の変化、それを後押しする技術の変化が、途方もない山崩れを起こすと認識すべきだ。こうした変化に鈍感な会社は廃れるしかない。

過去の延長線、すなわち教科書的にしか物事を考えられない人たちは、変化で生まれる新常識によって淘汰される。教科書にのっとったビジネスはできないと痛感しているが、解は誰も教えてはくれない。そこにビジネスの醍醐味がある。実に面白い時代になったものだ。

松井道夫(まつい・みちお) 1953年、長野県生まれ。第4代松井証券社長。一橋大学経済学部卒業後、日本郵船に入社。87年に義父の経営する松井証券に入社し、95年、代表取締役社長に就任。98年に日本初の本格的インターネット株取引を開始。「日本版ビッグ・バン」を牽引した一人として「証券界の革命児」と称されるが「異端児」とも揶揄(やゆ)される。2001年東証1部に直接上場を果たす。革新的なサービスを次々に導入するも全て真似され、昨今は「松井の時代も終わったね」といわれるが、闘志は衰えていない。
読者からのコメント
アーロンさん、40歳代男性
消費者が安さだけでは物足りなくなっている。これは誤認。安ければ良いなんて考えていないが、収入が増えないから安さを求めている。そんなことよりも証券会社は売りたい商品だけ売っていた。これからは顧客が求める商品を提供しなければ生き残れないだろう。
おぶさん、40歳代男性
いくしかない、やるしかない、日本人的この発想が元凶。また行けばわかるが、本当に多くの事がガラパゴス。今のうちに修正しないと。
コータローさん、50歳代男性
絶対に安いのがいい!公共料金も消費税も勝手に上げて、年金支給の年齢を引き上げ・支給額を削減する。日本の人口・若年層の減少が顕著であるにもかかわらず、何ら手を打てないような日本政府・国家は滅びる道を選択しているのです。安っぽい人間達には、安物で十分!なのです。
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