2012/5/10

カリスマの直言

個人投資家の株式売買代金に限れば、いったん年間350兆円まで膨れ上がったが、現在はネット取引が勃興し始めた10年前とほぼ同じ110兆円と「行って来い」になった。これは年間1200回以上売買している数万人のデイトレーダーの売買代金50兆円を含めてのものだから、一般の個人投資家の売買は半減していることになる。対面型証券会社だけでなく、ネット証券会社も利益が出ず、青息吐息なのは当然だろう。

そこで株式以外の分野、例えばネットFX取引で利益を得ようとするが、この分野の競争は株以上だ。店頭取引では手数料はほぼ無料、円ドルのスプレッドでも腹切りレートともいえる1銭を割り込んだ競争が続いている。空港で外貨両替するときのスプレッドは6円程度だから、いかにひどいレベルで競っているのか、おわかりいただけるだろう。

第三次産業革命の本質

デフレ戦略の典型である「安さ爆発戦略」のインフレ対応の難しさと、その戦略の行きつく先である過当競争の結末。この両者を合わせて考えると、価格戦略と表裏にあるコスト戦略の重要性が浮き彫りになってくる。本質は費用の高低が何に起因しているかということだ。

「役員と社内打ち合わせ(背景には霞ヶ関のビル群)」

世にいうイノベーションはこれに大きく関わってくる。英国エコノミスト誌の記事「第三の産業革命」によると、安価な労務費を求めてアジアなどに出ていった先端技術型産業の製造拠点は、先進国に戻っているそうだ。そうした産業の付加価値の大部分が、知的財産から生まれているという。そうなると、どこに工場を設置するのかは、あまり重要でなくなる。第二次産業革命は大量消費・大量生産のための、T型フォードの組み立てラインというイノベーションから始まった。この延長で製造コストをいかに下げるかの競争が100年間続いた。

それが今、設計図さえあれば、どこで作ってもあまり変わらない時代になりつつある。製造工程のデジタル化が急速に進展し、例えば自動車も、いずれ服と同じようにオーダーメードが当たり前となろう。材料が鉄ではなく炭素繊維になれば、その流れは加速する。工場は無人化し、製造に関わる人件費は減少する。

価格の高低は同じものを比較していれば成り立つが、違うものは比較できない。人の価値観や美意識は千差万別であり、それが価格決定の重要な要素となろう。安いか高いかの客観的基準がなくなるのだ。

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