お天道様に恥じない経営が日本企業の目指す道松井証券社長・松井道夫氏

2012/4/12
「世間様に恥じない行為がCSRの基本」

社長室の窓辺に蘭が咲いている。数年前、オフィス移転のお祝いにいただいたものだ。花が散ったら捨てるものとばかり思っていたが、水やりをしながら窓際に放っておいたら、毎年、見事に花をつけている。植物は動物と違い自ら動けないから、葉をお天道様に向け、光合成という生化学反応をフル活用して必死に生きている。

経営も同じだ。「お天道様がいつも見ている」というのは、古来から日本の精神風土だった。商売における「お天道様」は、いわゆる「世間様」であり、それに恥じない行為がCSR(企業の社会的責任)の基本だ。これを逸脱した会社を「世間様」は日干しにする。そして、このCSRを具現化するための企業統治(ガバナンス)とは、経営者の任免と監視の仕組みだと私は考えている。企業行動の全ての責任は社長が取るのだから当然だ。

6年前、経済界の調査機関である日本経済調査協議会(日経調)で「お天道様に恥じない経営」という題のレポート創りに参画した。経営のガバナンス論を軸に日本的CSRの在り方をまとめたものだ。一種の哲学論争だから統一見解は出せなかった。ただ、何人かの経営者・学者の方々と一年くらい議論した経験は貴重だった。題名を「日本的……」とするよりも「お天道様……」にしようというのは全員一致で決まった。

日本の商家にも「お天道様が見ている」という教えがあった。単に法令遵守とかコンプライアンスとかと違い、実に含蓄のある言葉だと思う。企業統治の在り方も日本のこうした風土を背景とした、欧米的でないものをベースに考え実行していくべきだろう。会社の定義にしても、「会社は株主のもの」という欧米での社会通念に、大方の日本人は違和感を覚える。会社はカネだけを軸にした結合体ではなく、ヒトを軸にした結合体でもあるという通念があるからだ。その按配が難しいことを日本の経営者なら誰しも思い悩む。だから欧米の物真似はいただけない。仏作って魂入れずになりかねない。

次のページ
日本的資本主義の精神とは