独立系企業再生ファンドを育成せよ(安東泰志)ニューホライズン キャピタル会長兼社長

2014/6/22

カリスマの直言

「企業再生は日本では銀行が手がけるものとの認識が根強いが…」

先月、「池貝」の株主がひっそりと入れ替わった。池貝(旧・池貝鉄工所)の創業は1889年に遡る。同年、日本国産初の旋盤の製作に成功し、日本を代表する工作機械メーカーとして発展を続けてきた名門企業だ。しかし、低採算下での無理な拡大路線が裏目に出て2001年に民事再生法を申請、04年に中国の総合電機メーカー、上海電気集団の傘下に入る形で再生を果たした。今回は、その株式の相当部分を、台湾の友嘉実業集団に譲渡するというのだ。池貝は大型工作機械に特化している上、以前に比べれば規模も縮小されているので、一見するとたいした影響はないように見えるかもしれない。しかし、本当にそうだろうか。

池貝の子会社である池貝ディーゼルは、船舶用エンジンを主力とし、海上保安庁が調達する船舶用エンジンの相当部分は池貝ディーゼルから供給されているのだ。海上保安庁の巡視艇の心臓部分が、尖閣諸島を巡って領有権を主張する中国と台湾の企業に握られているというのでは、しゃれにもならない。

池貝の本社工場(茨城県行方市)

当初池貝の資本を握った上海電気集団の背後には中国政府の「走出去(ゾウチュウーチュ)」と呼ばれる中国企業の対外投資支援策があったとされており、池貝の高度な技術や人材が継続的に上海電気集団を通して中国側に流出していたと考えてよかろう。筆者は、企業再生ファンドを率いて日本企業の再生支援をしている立場だが、過去10年、優れた技術を持つ中堅企業への投資を巡って、中国企業との争奪戦になるケースが相次いでいる。そして、政府の支援を受け、資金力が豊富な中国企業は極めて手強い存在だ。たとえば、池貝のケースは、日本企業や日本の再生ファンドを通り越して、上海から台湾の企業に株式が渡ってしまった形だ。

ところで、日本では、企業の再生支援は銀行が手掛けるものとの認識が根強い。池貝の場合も、民事再生法を適用するまでは、旧日本興業銀行による人・モノ・カネの強力な支援があった。しかし、2000年台に入ってから銀行を巡る環境は激変した。

そのきっかけは、01年に誕生した小泉政権の下で、銀行の資産査定基準(融資先企業の信用力に応じて、「正常先」か「問題先」かに分類する基準)や、自己資本比率の定義が厳格化されたことだ。

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銀行・企業の株式持ち合い、全面的に禁止すべき