「ここが変だよ日本の投資信託」松井証券社長・松井道夫氏

投信の運用成績というのはプロフェッショナルの力量の問題であり、そこが本質論であるべきだ。分配という単なる技術論が、この本質を覆い隠すとなれば、プロの腕も鈍るのは道理である。そして、そのツケは顧客が払うことになる。料理だってそうだ。うまい料理人は客が育てる。その客の舌はやはりうまい料理が育てるのだ。

投信手数料は横並び

投信の運用成績は、販売会社と運用会社が徴収する手数料水準が大きく関わってくる。ところがこの10年間、これが下がるどころかむしろ上がっている。金融自由化で40分の1と劇的に低下した株式の委託売買手数料と比較すると、対照的である。そもそも投信の販売手数料は当初から自由化されていたが、投信協会の業務規程で販売手数料の値引きを禁じられていた。当社が金融自由化前に、「独占禁止法違反ではないか」と強く主張したのを受けて、1998年3月にその規程は変更された。これにより、証券各社が自由に販売手数料水準を決められるようになったはずであったが、商品を卸すかどうかは運用会社の胸三寸であり、実質上、証券会社に販売手数料決定権はなかった。

英国放送協会(BBC)のインタビュー。テーマは「日本の婿養子」。日本のマスオさんガンバレ。

というより、お互い手数料引き下げ競争をしていては証券会社の主要収益源が崩壊するから、系列の投信会社に暗黙の圧力をかけていたというのが実態だろう。まるでカルテルだ。投信協会の規程変更を受けて、純然たる独立系中小証券として、ほぼ全ての投信会社と付き合っていた当社は、それまで2~3%だった販売手数料を一律1%とし、信託報酬も運用会社に一部返すか顧客に戻す方針を発表した。ところが、「そんなことをされたら他の販売会社が困り、ウチの投信の販売を誰も引き受けなくなってしまう」と言われ、投信会社の商品供給が見事に途絶えてしまった。

カルテル破りは干されるのが世の道理である。結局当社は断腸の思いで投信の販売自体を諦めることにした。社員には投信を購入してくれたお客さんのところにおわび行脚をしてもらい、泣く泣く他社を紹介した。300本近い投信を扱っていたが、2年かけて移管した後、投信の販売はドル建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)などを除き、一切やっていない。「なぜ松井さんは、こんなに儲かる投信を扱わないのか」とよく聞かれるが、私には私の矜持(きょうじ)がある。自由競争ができるような環境が整ったら、いずれ再開したい。

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