ガラパゴス化した投信の終焉

いずれ、デフレが終焉(しゅうえん)してインフレに変われば、「貯蓄から投資へ」の時代が到来するだろう。それは投信時代の幕開けでもある。現在の、世界に通用しない日本独自の投信は、日本のガラパゴス化の典型例だ。こんなに手数料が高く、日替わりメニューのオンパレードで、誇るべき実績も乏しい、この三拍子そろった商品が世間に受け入れられるはずもない。これを放置しておけば、手数料もはるかに安く、株と同様に毎日値が付き、証券会社を通じていつでも売り買いできる、指数に連動した上場投信(ETF)が一世を風靡しよう。

日本では上場できないアクティブ投信、すなわち、プロの腕次第の味で勝負、といった商品は、投資家保護を徹底した上で、コンサルティングを伴う対面型販売会社による競争手数料の下で扱うか、可能なら運用会社の直販でやればよいと思っている。シェフ直営のレストランだ。ETFとそうした投信の併存がこれからの時代の要請だと思っている。

投信の製販分離が最初の一歩

当社の外人持ち株比率は浮動株の約3分の1に達しており、海外のファンド・マネジャーに常時ウオッチされている。そこで年に1度は海外の投資家を私自身が訪問している。彼らと議論をして感じるのは、日本のファンド・マネジャーとは違った本気度だ。こちらも当然本気になり、興奮して口角泡を飛ばすこともしょっちゅうだ。成果主義が徹底しているからこその本気度であり、出資者と同じ船に乗っているのだ。そうした連中とやり合うのは実に勉強になる。他人のお金ではなく、自分のお金という意識でなければこうはならない。

日本の投信が発展するためには、製販分離、すなわち製造(運用)を担う投信会社の真の独立をはかった上で、販売会社の論理に振り回されず、他人のお金を運用するプロとして、投資家による信賞必罰を伴う実績競争をさせることが、何よりも求められている。

松井道夫(まつい・みちお) 1953年、長野県生まれ。第4代松井証券社長。一橋大学経済学部卒業後、日本郵船に入社。87年に義父の経営する松井証券に入社し、95年、代表取締役社長に就任。98年に日本初の本格的インターネット株取引を開始。「日本版ビッグ・バン」を牽引した一人として「証券界の革命児」と称されるが「異端児」とも揶揄(やゆ)される。2001年東証1部に直接上場を果たす。革新的なサービスを次々に導入するも全て真似され、昨今は「松井の時代も終わったね」といわれるが、闘志は衰えていない。
読者からのコメント
60歳代男性
銀行に派遣されて投資信託・保険窓販のサポートをしています。投信の販売・普及では銀行に期待するところ大ですが、現在、期待は裏切られたままです。いずれは自行の顧客が大きな損失を被っていることに目を向けて、金融のプロとして顧客期待に応え、「購買代理人」という立場で投信を吟味し提供(販売)するように成長してほしいと切望しています。当行には当行の矜持があると松井さんのように言える日が来ることを期待しています。
とむくんさん、40歳代男性
おっしゃるとおりですね。同じような投信を次々と出して、販社は手数料しか興味がない。そもそも投資家の資産を増やすというコンセプトが無いのではないか。投資家のお金が増えなければ、金融機関も儲からない。そろそろ自分の顧客の投資家の資産を増やす努力をするべきです。
40歳代男性
この意見は日本の投資信託を特殊視しすぎています。「(日本の)投信は手数料競争もほとんどない(競争はあります)」「欧米の著名ファンド・マネジャーは独立して運用しているオーナーである(そうでない場合も多い)」「(運用は)組織力よりもファンド・マネジャー個人の力量、技量が成否を分ける(これは運用のスタイルの問題。組織力を軽視すると今度は運用の継続性に問題が出てくるのです)」など、事実と異なるキャッチーな記述が目についたので、注意喚起のために投稿させていただきます。こういう大げさな論評を根拠に日本はダメだという、短絡的な思考に陥らないようにしたいものです。また、そもそも「サラリーマンが運用する」という記述には、サラリーマンはダメなのだという偏見も垣間見えます。欧米はサラリーマン運用者がいないのですか? 著名ファンド・マネージャーとの比較のみで、日本はダメと断じることはできないでしょう。
王道さん、60歳代男性
松井さんのおっしゃる通りです。証券会社の顧客利益を無視した運用販売体制が長く続き、投資家を愚弄し続けたことから、まともな投資家が育っていない。金融庁、投信協会をはじめ、行政が放置・助長したので、日本の投資運用業は産業としてのレベルに達していないと思う。やるべきことは判っているのに既得権をいつ断ち切れるか絶望的になる。松井さん、早く始めてください。
30歳代男性
全くおっしゃる通りで、金融関係者なら皆認識している禁句の事実。数十億円、百億円簡単に集まって数%なんて商売他にないでしょう。数多く売る、後は野となれ山となれ、こんなおいしくて反道徳的なビジネスモデルを自ら断ち切らねば業界の反転は望むべくもない。
taisuke87さん、20歳代男性
以前、投信を勧められ、誰が運用してるのか聞いて回答されなかったことを思い出したな。誰が運用しているのかもわからんところに自分の金を預けて更に信託報酬だ、販売手数料だを取られるって思うと買うわけないだろと思うが意外に買う人が多いんだね。オンライン証券とかには海外投信をもっと入れて貰い、投資家の買えるバリエーションを増やして欲しい。そうすれば国内投信は淘汰されるでしょう。
錦織comebackさん、30歳代男性
日本の投資信託は、手数料を取りすぎです。業績連動にして、マイナスのときは、報酬をもらわないとかにすると良いのでは?
40歳代男性
全く同感。アメリカではバンガードなど松井氏と同じ哲学を持った運用会社が好調と聞く。日本の投信は異常なことばかり。ETFやノーロードのインデックス・ファンドなどごく一部を除き、自由競争がほとんど働いていない。本当に買いたいと思える投信はほとんど見つからない。良いと思っても「使い捨て」扱いされて資産が減る一方のモノが多い。国際競争・自由競争に晒されておらず、規制と実質的なカルテルでがんじがらめだからだ。毎月分配金のような非効率な投信を求める投資家のレベルの低さも要因だろう。最終的に個人投資家が長期的な資産形成を効率的に実現する手段として、投信が真の意味で成長し、成熟していくことを期待している。松井氏のようなパイオニア精神を持った企業家の活躍も不可欠。一橋大の先輩として、尊敬し、応援しています。
hideさん、60歳代男性
社長の投信に対する提言には全く同感です。私も証券会社にはいつも投信は一種の詐欺行為だと言っています。販売会社に運用者に会わせてほしいといっても無しのつぶてです。このような商売を政府はどのように考えているのか?金融商品取引商法なんて販売会社ひいきにみえます。世の中おかしいです。
山添晴夫さん、60歳代男性
松井社長は、証券会社社長でありながら、顧客(個人投資家)の立場・視点から課題・問題点が指摘でき、経営ができる’革新’経営者であると思います。’サラリーマン’経営者でないがゆえの点はその背景にあると思いますが、証券・銀行(投信販売)と個人資金運用者がより合理的に取引ができるよう変革を期待いたします。でなければ、一般国民の’貯蓄から投資’の世の中は実現しません。
70歳代以上男性
いつも、ホンネの意見を聞けて新鮮な気持ちになります。松井証券がネット専用証券会社になってから株式投資をはじめました。運用成績は別にして、納得の結果に満足しております。
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