二十数年前、私が入った頃の松井証券の株式委託売買額は年間1000億円だった。コールセンターになって3000億円に、それがネット証券になって、ピーク時は35兆円となった。コールセンター時代の100倍、私がこの会社に入った頃の300倍だ。従業員100人そこそこの小さな証券会社が年間370億円の経常利益をあげた。売上高経常利益率は70%と驚異的な数字になった。

当然のように、ビジネスモデルをまねて、新規参入者がどんどん現れた。彼らの武器は安い手数料だけ。ネット証券開業当初、従来の4分の1になった手数料は、今では業界最低水準で40分の1になった。デフレが長期化し、消費者も投資家も当然のことながら安いものになびく。そこに質の差別化はない。ネット証券ビジネスでは、それが2005年ごろから本格化した。

ライブドア・ショックもあり、以後、市場は縮小する一方だった。手数料の低さを競うネット証券ビジネスはもう終わりだと思うようになった。私は自分が始めたビジネスをぶっ壊し、もう一度、新機軸を打ち出さなくてはならないと思った。それが10月11日から始めた新しいビジネス、「即時決済取引」だ。

現在、個人の株取引の8割以上はネット経由で、口座数は1600 万だ。ネット取引が普及し、手数料が下がったため、一人あたりの売買金額は増えた。それでも市場全体に占める個人の売買代金比率は20%を下回っている。実際に取引している人数は激減しており、個人投資家の資金小口化が顕著なのだろう。

この数年、1日のうちに超短期の売買を繰り返すデイトレードが目立っている。年間1200回以上取引している松井のデイトレーダー比率は約50%だ。人数は4000人で口座数全体の0.5%。単純計算すれば、デイトレーダー1人で普通の個人投資家200人分の売買をしていることになる。

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