やっぱりおかしい配当二重課税松井証券社長・松井道夫氏

2012/7/5

カリスマの直言

「株主総会では配当への関心の高さを痛感した」

先日、弊社の第96期株主総会があった。日曜日開催ということもあり今回も400名ほどの株主に来ていただいた。会場を見渡すと年配の方が多い。豊かな老後と資産運用は密接不可分であるから、この傾向は弊社だけではないだろう。

前期の配当は、一株当たり15円でご承認いただいたが、総会直前の株価448円に対して配当利回りは3.3%となる。質疑応答の最初のご質問も配当に関するものであり、会場から注がれる真剣な眼差しを前にして、株主の方々の配当への関心の高さを痛切に感じた。

経済危機克服のための有識者会合

ちょっと古い話になるが、麻生太郎元首相の「株屋発言」を覚えておられるだろうか。2009(平成21)年3月に首相官邸で開かれた「経済危機克服のための有識者会合」でのことだった。

私の政策提言の質疑応答で、元首相の「やはり株屋というのは信頼されていないんだなあ」という発言があった。世間一般の株に関しての印象を代弁するもので、私は特に違和感を覚えなかった。どんな政策も受け入れられる環境づくりが肝心だということであり、言葉使いはともかく、さすがに政治家の視点だとむしろ教えてもらったとさえ思った。

ところが、会議場を出た私を待ちうけていたのは、「首相の株屋発言をどう思われますか」というものだった。私は上述の感想を述べただけだったが、翌日の新聞紙面は見事にこの発言で埋め尽くされた。昨今よくあることではあるが、枝葉末節のどうでもよいことに焦点が当てられ、本質論がすっ飛んでしまうのは残念でならない。この時も会議の模様は別室のテレビで流されており、発言者の表情や間合いも含めて本質は読み取れたはずだ。今でも内閣広報室のサイトに議事録込みの動画が載っているので、ご興味があればご覧いただきたい。

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配当所得における二重課税とは