お金があれば「保険」はいらない保険コンサルタント 後田亨

「年齢や世帯構成別におすすめの保険プランを提示したい? 失礼ですがナンセンスだと思います」――。過日、ある媒体から取材依頼を受けた際、思わず即答してしまいました。「がん保険」についての企画だったのですが、「未婚・既婚・子供の数などは重要ではない。要は、どれだけ自由になるお金を持っているか。ほとんどそれだけだろう」と感じたからです。

この事実に気づくお客様も中にはいらっしゃいます。同業の知人が、ある法人のトップに近い方に「がん」と診断された際に1000万円が支払われる保険を提案していて、成約寸前で断られたのです。申込書を持参して訪問した日に「このあいだの保険の話、なかったことにしてもらえる? 悪いね。『がん』に罹(かか)ったら1000万円っていうのは確かにいいなと思ったんだけど、よく考えてみたら、俺、1000万なら持ってるんだよね」と言われたそうです。

1000万円という「まとまったお金」が、大病に診断された時点で支払われる契約は、プレゼンテーションの時点では、お客様にとって魅力的なものだと思われていました。ところが、お客様は経営状態が良好な法人の役員です。「1000万円なら自己資金でなんとかなる」と、申し込み直前になって気がついたわけです。知人の同業者も「1000万円のお金がある人に、1000万円の保険はいらないですね」と苦笑いして退散してきたそうです。

たしかに、その通りだと思います。その一方でこの役員が毎年、迷うことなく更新している契約もあります。業務上の事故などにより、お客様を傷つけてしまったり、死に至らしめた場合などに保険金が支払われる「賠償責任保険」です。保険金の額は1億円なので、1000万円なら自分で出せるという役員も「損害賠償に関しては、保険に頼るしかない」と判断されているわけです。

判断基準は「保険金の額が、自力で調達できる金額であるかどうか」という1点です。

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