まず西日本旅客鉄道(JR西日本)広報部に駅の命名法を聞いてみた。「わかりやすく長く親しまれるように所在地の地名を基本に地元の要望も考慮して決めます。移転の可能性もある民間施設や企業名はまず使いませんが、同志社前駅のような例外もあります」とのことだ。甲子園口駅は球場や住宅地「甲子園」への近隣駅という意味だろう。
口駅はいくつかに分類できる。まず甲子園口駅や近畿日本鉄道・信貴山口駅のようにある地域・施設や山などへの「玄関口」や「入り口」。現地への距離は様々だ。関東にも京王電鉄・高尾山口駅などがあるが数は少ない。
もう一つが阪急電鉄・西宮北口駅のような「方角+口」。「西宮北口は旧西宮町への北側の入り口という意味でつけられたようです」と、西宮文化協会の山下忠男会長。阪急・宝塚南口駅のように既存駅からの方角を示す場合も多い。地図研究家の今尾恵介さんは「関東なら北西宮や南宝塚になったのでは」と話す。
神戸電鉄粟生線では鈴蘭台駅―鈴蘭台西口駅―西鈴蘭台駅と続く。「西口はすぐ近くというイメージ。逆に鈴蘭台―西鈴蘭台―鈴蘭台西口ではおかしいでしょ」(同社)。なるほど微妙な感覚なのだ。
京都では街道の関所を「鞍馬口」「丹波口」など「京の七口」と呼んでいた。日本語語源研究所(京都市)の吉田金彦所長は「関西では昔から東寺口のように人の出入りが多い場所に口をつけました」と語る。
頭に「新」がつく駅は関東61駅、関西19駅。特に京都府は少なく、京都市内はゼロ。「京都は地名にこだわりが強く、なるべく昔からある地名を使います」と吉田所長は説明する。
一方、関東はJR京葉線など比較的新しい路線に多い。「JR武蔵野線はほぼ半数が東・西・南・北か新で始まる駅名。昔からある大字(おおあざ)レベルの地名を嫌い一般に知られる地名を一部に使うわけですが、逆にわかりにくい例もあります」と今尾さん。