2013/1/26

耳寄りな話題

正宗は北前船などで全国に運ばれた。北海道函館市の老舗レストラン「五島軒」は開業した1879年から今日まで桜正宗を提供している。

今、正宗を冠した酒銘や社名は百数十あるといわれる。変わり種では武蔵野酒造(新潟県上越市)の「スキー正宗」。同社によると上越市は日本でのスキーの発祥地。古くから正宗の名を使っていたが、昭和初期に街おこしの一環でスキー正宗に変えたという。長野銘醸(長野県千曲市)の「オバステ正宗」は江戸末期、人気にあやかり採用。オバステは本社近くの地名だ。

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CMなどにより正宗で知名度が一番高いのは菊正宗酒造(神戸市)だろう。江戸後期に「正宗」を採用し、やはり条例制定後に登録申請して不許可となり、「菊」をつけて再申請し、受理された。1965年に社名として採用している。同社の嘉納毅人社長(69)は「正宗の採用時は問屋から正宗の名をつけたいとの要請がくるほど人気だった」と話す。最大手の白鶴酒造(同)は戦前まで「嘉納正宗」など4つの商標を持っていたという。

明治の商標条例の制定時に苦い経験をした桜正宗は今、再び商標の壁にぶつかる。相手は中国だ。4~5年前、輸出を始めるために現地で商標登録しようとした。ところが、既に桜正宗の商標は現地企業に取得されていることが判明した。現在も係争中で、同社の原田徳英執行役員(50)は「中国から輸出要請はあるができない状況」と話す。

酒銘には各社の歴史を背景に様々な思いが隠されている。一献、酒銘に思いをはせてみよう。

(神戸支社 原欣宏)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2013年1月23日付]

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