N
旅行・レジャー
耳寄りな話題

2012/11/24

耳寄りな話題

五個荘で活躍「近江商人」
高齢化の街では「おじいさん」

飛び出し坊や誕生の経緯を聞こうと、生みの親とされる久田工芸(東近江市)代表の久田泰平さん(71)を訪ねた。「子供の事故防止に役立ち、安くできるものをっていう相談が始まりだった」と明かす。「見てパッとわかるモノを考えた」が、なかなか思いつかない。ようやく出てきたのが「目を引きやすい赤や黄色を使い、今にも走り出しそうな子供のポーズ」。

注文した側の東近江市社会福祉協議会に聞くと「1973年に発注した記録があります」と真弓洋一地域福祉課長。これが発祥の地の証拠だ。「当時は急激に車が増え始めた。高速道路のインターが近く、県外からの車も多くなり、事故の恐れが高まっていたんでしょう」と説明してくれた。

第1号から40年近く。飛び出し坊やの種類もいろいろ登場した。作製する事業者は久田工芸のほかにもあり、デザインが違う。それを買う自治会もあれば、独自に作る例もある。夏休みの交通安全教室に参加し、親子で作り設置した思い出を持つ人も多かった。

◇            ◇

甲賀の空中駆ける「忍者」

地域らしさを取り入れたデザインも多い。滋賀が舞台の1つのNHK大河ドラマにちなんだ「お江(ごう)ちゃん」、商人が活躍した五個荘には「近江商人」、甲賀市には「忍者」。高齢化が進む地域や高齢者施設前には「おじいさん」「おばあさん」、女子高生バンドのアニメ「けいおん!」で有名になった豊郷町には「女子高生」といった具合だ。

「冬には帽子をかぶせてもらっていた」「壊れていたのに翌日には修理されていた」など、飛び出し坊やに関する話はいくらでも聞けた。1つ1つに、地域を思いやる気持ちが透けて見える。「地域の子供や高齢者は、地域で守るという意識の表れなんでしょう」と県警の熊谷管理官。

滋賀県の人は運転中に飛び出し坊やを見かけると、無意識に速度を落とすという。一方で、なじみの薄い県外の運転者は、坊やにハッとして周辺を注意する。風景の一部となった飛び出し坊や。安全を願う地域の思いを背に今日も県内各地で目を光らせる。

(大津支局長 蓮田善郎)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2012年11月21日付]

注目記事