フグ、大阪が6割食べ尽くす 調理資格も取りやすく

大阪で冬の鍋といえば「てっちり」だろう。弾力のあるフグの味わいは格別だ。ところが東京の友人らは違う。すき焼きや寄せ鍋、キムチ鍋のほうが、真っ先に思い浮かぶらしい。しかも、てっちりとは呼ばず「フグ鍋」という。この差はなぜ……。理由を調べてみると、てっちりの味わいと同様、複数の要素が絡み合っていた。
生きたまま競り落とされるトラフグ(大阪市福島区の大阪市中央卸売市場本場)

2013年12月下旬。大阪市中央卸売市場本場(大阪市福島区)に足を運んだ。水産物の取扱高は東京・築地に次ぐ全国2位。朝4時に始まった競りには20~30人が参加。生きた状態の新鮮なフグ約60ケースの取引価格が次々と決まっていく。一段落したところで競り人が取材に応じてくれた。「大阪は全国のフグの約6割を消費している。水産物全体の取扱量で比べると、ここ大阪は東京・築地市場の3分の1にすぎないけど、フグの取扱量だけは肩を並べているよ」

12年の市場の取り扱い実績を調べてみると、フグ1キログラム当たりの取引価格は東京・築地が3070円、大阪が2478円。大阪のほうが2割ほど安かった。単純には比較できないものの「大阪は養殖フグの生産地に近く、トラックなどの運送費用も抑えられる」ためらしい。

実際、フグの養殖拠点は西日本に集中している。農林水産省によると生産量で全国1位は長崎県で2289トン。意外に知られていないが、山口県下関市の南風泊(はえどまり)市場などに出荷され、全国に出回っている。2位以下は熊本県、兵庫県、大分県、愛媛県と続く。東京に比べると大阪の地の利は明らかだ。

フグはいつから食卓に上るようになったのか。私財を投じて、ふぐ博物館(大阪府岸和田市)を立ち上げた北浜喜一館長は「縄文時代から食べられていたようです」と話す。貝塚からフグの骨が相次いで発見されるためだ。

大阪でフグは「鉄砲」

大阪はかつて「魚庭(なにわ)」と言われるほど、水揚げされる魚の量や種類が豊富な土地だ。当然フグも食べていたが、その毒であるテトロドトキシンに当たって、命を落とす事故が後を絶たなかった。そのためだろう、大阪でフグを“鉄砲”と呼んでいた。てっちりは「鉄砲のちり鍋」から生まれた言葉とされる。ちなみに、フグ刺しは「鉄砲の刺し身」だから「てっさ」となった。

大々的にフグ食を禁じたことで知られるのが天下統一を果たした豊臣秀吉だ。朝鮮出兵のために集めた武士が中毒に苦しんだのがきっかけという。江戸時代に入っても、武家を中心に食用は禁じられるが、大阪は自由闊達な商人の町。明治以降に解禁されるのを待たず、フグは食道楽の心をつかみ続けた。北浜さんは「スムーズに税を払ってもらうため、城代がある程度、フグの流通を目こぼししていたのでは」と推測する。

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